赤猫亭の夕食とミラの警戒
ギルドでの完了報告を終えた俺たちは、そのまま真っ直ぐ定宿の『赤猫亭』へと向かった。地下水路の泥と悪臭を井戸水で洗い流し、食堂の席につく。
アル「今日は地下水路の掃除で泥まみれになったしな。ガンテツの言う通り、少し早いが美味い飯とエールで打ち上げにしよう。マーサ、奮発して肉を多めに頼む!」
マーサ「あいよ! 下水道の掃除とはご苦労なこったね。しっかり稼いできたみたいだし、とびきり美味いシチューとエールを出してやるよ!」
しばらくして、湯気を立てる肉入りシチューと冷えたエールのジョッキがテーブルに並べられた。ガンテツは待ってましたとばかりにジョッキを煽り、豪快な笑い声を上げる。
俺はシチューの肉を頬張りながら、向かいの席で黙々とパンをかじっているミラに声をかけた。
アル「なあミラ、お前も遠慮しないで肉を食えよ。……ところで、さっきの酒場での話、どう思う? ゴブリンが鉄の武器や鎧で武装してるって噂だ」
ミラ「……面倒なことになったね。アタシの短剣は、硬い鉄の鎧を貫通するようにはできてないんだ。もし街でそんな連中と出くわしたら、背後から関節の隙間を狙うか、ガンテツの盾に隠れてるしかないね。まあ、その前に逃げるけどさ」
アル「違いない。いざって時はお前の鼻と足が頼りだ。怪しい気配を感じたら、遠慮なく言ってくれよ」
ミラ「ふん、言われなくてもそうするよ。自分の命が一番大事だからね。……でも、アンタがそうやって先に聞いてくるのは……悪くないね」
セシル「そうだね。相手が鉄の装備を持っているなら、僕たちの戦術も見直す必要があるかな。でも今は、せっかくの温かい食事を楽しもう」
ガンテツ「ガハハ! 難しい話は後だ! 明日も街の中で小銭を稼げば、毎日こうして美味いエールが飲めるんだからな!」
俺たちはエールのグラスをぶつけ合い、今日の無事と確実な稼ぎを祝った。
サイドストーリー
俺たちが夕食を楽しんでいる中、ザインは大げさに天を仰いでシチューの皿を抱え込んでいた。
ザイン「おお、神よ! この豊穣なる肉の恵みに感謝いたします! 私が水路の不浄を遠くから祈りで浄化したおかげで、この奇跡の夕食にありつけたのですね!」
ミラ「……チッ。祈ってただけでドブ掃除をサボった奴が、一番いい肉を持っていこうとするんじゃないよ」
ミラは素早い手つきでフォークを突き出し、ザインの皿から一番大きな肉の塊を鮮やかに奪い取った。
ザイン「ああっ!? 私の神聖なるお肉が! 返しなさい、この野蛮な短剣使いめ!」
ザインの悲鳴を無視して、ミラは奪った肉を美味しそうに咀嚼した。誰もザインを助けようとはせず、食堂には笑い声が響いた。




