盾と槍の連携作業
沢に群れるゼリー状の魔物、スライムの群れを前に、俺は昨日セシルと立てた作戦に一つアレンジを加えることにした。
アル「セシル、ただ俺が突っ込むより、確実な壁役を置いた方が事故が減る。ガンテツ、お前の出番だ。まずはそのデカい大盾でスライムの体当たりを受け止めてくれ。奴らが盾にベチャッと張り付いて動きが止まった瞬間を、俺が槍で正確に突く」
ガンテツ「ガハハ! 任せておけ! ガキども、盾の後ろから出るなよ。魔法なんぞより、この鉄板のほうが信用できるからな!」
ガンテツが豪快な笑い声と共に沢へ踏み出すと、足音に反応したスライム数匹が一斉に飛び跳ねて襲いかかってきた。しかし、ガンテツはドワーフの強靭な足腰で踏ん張り、構えた鉄扉の大盾でそのすべてを完璧に受け止める 。
ベチャッという鈍い音と共に、スライムの質量が盾にぶつかり、一瞬だけその動きが完全に停止した。半透明の体の中に浮かぶ、生命線であるコアがはっきりと見える。
アル「そこだ!」
俺はガンテツの脇から素早く長槍を突き出し、動けないスライムのコアを次々と貫いた 。パリンッという小さな音を立てて核が砕けると、スライムの体は張力を失い、ただのドロドロとした粘液へと変わって地面に崩れ落ちる。
セシル「やるね、アル!……ここからが僕の仕事だね。」
後方に待機していたセシルが素早く歩み寄り、液状化したばかりの新鮮なスライムの粘液を、用意していた空き瓶へと手際よくすくい取って栓を閉めた。
ガンテツ「ワシは盾を構えただけだがな! だが、アルの槍の狙いも大したもんだ!」
俺たちは互いにうなずき合い、連携によって驚くほど安全に、かつ迅速に一つ目の空き瓶を満たすことに成功した。
サイドストーリー
俺たちが沢で手際よく粘液の回収を続ける中、ザインだけは遠く離れた乾いた地面に立ち、メイスを掲げて大声で叫んでいた 。
ザイン「神よ、迷える子羊たちに救いを。……あの不浄なる粘液が、私の神聖なる法衣に決して飛び散りませんように……! 私はここ後方より、清浄なる祈りをもって皆様の労働を支援しておりますぞ!」
ミラ「……チッ。ただ泥水被るのが嫌で、安全な場所に隠れてるだけじゃないか。少しは索敵くらい手伝いなよ、ニセ僧侶」
ザイン「無礼な! これも立派な宗教的支援です! 祈りという不可視の労働対価として、後の報酬から私の分の喜捨を忘れないように!」
ミラは心底呆れたようにため息をつき、ザインを完全に無視して周囲の木の上の警戒に戻った 。




