第3話・続く未来の一幕に~己が選んだその先は~
残酷描写を含みます。
苦手な方はスキップして下さい(*- -)(*_ _)ペコリ
第2章 幻影と現実の狭間で惑う
第3話・続く未来の一幕に~己が選んだその先は~
ぽたり、ぽたりと零れる雫が緩やかに広がる赤い水溜りに落ちる。
閉ざされた石造りの暗い部屋に、響くのは愉し気な笑い声。
床に倒れ伏すのは四人。
一人は女性で、残りは男性。
その全員を、アインは知っていた。
女性はジャンヌ。
聖皇国の皇孫皇女で女神に選ばれた巫女姫。
会ったのはほんの数回で、殆ど話した事もない。
けれど、自分が関わってはいけないくらいに、とても高貴で、とても大切な人。
残る男性たちの内、一人は自分の恩人で、一人はいつも、自分に厳しい人。
残りの一人はあまり関わったことはないけれど、恩人やジャンヌが大事にしている人。
クロードと、ファンと、リオン。
彼らは皆、床に伏して赤い水溜りを広げている。
もう、ピクリとも動かない。
動くはずがない。
全員、全身を切り刻まれているのだから……
室内に立っているのはアインと、もう一人。
そのもう一人が笑う声だけが、さして広くもない部屋の中に響いていた。
「あはははは!所詮はこの程度でしたか!!」
実に、愉し気に笑っているのはアーグ。
その手に握られた魔剣が揺れて、微かに明滅する光を見下ろす。
魔剣の鍔にはめ込まれた濃紫の宝石にぴしりと小さな亀裂が入った。
徐々に笑う声が静まり、ゆっくりとアインに歩み寄る。
表情なくそこに立ち尽くすアインの手には両刃のナイフ。
ナイフどころか両手も、服も、真っ赤に染まっている。
「……これだけ近くにあれば、多少の影響は受けますか……」
アインの正面で立ち止まったアーグは、クツクツと喉の奥で笑いながら呟く。
するりと左手でアインの頬を撫で、親指で目元を擦って涙を拭う。
掌で頬を包むようにして、軽く腰を落とした。
「どうですか?君の選択の結果は?」
囁きかけても反応はない。
当然だ。そこに、アインの心は存在していない。
ただ、アーグの右手に握られた、魔剣の鍔にはめられている濃紫の宝石が微かに光って、再びぴしりと小さな亀裂が入っただけ。
ざわりと、濃密な闇の魔力がまとわりつく。
心を、魂を、絡みとって、塗り潰していくような……
(……っ!)
唐突に、鋭い痛みが走って、びくりと抜け殻の体が跳ねた。
軽く、アーグが目を見張る。
それを抜け殻の体が見ていた。
「……へえ……?」
緩やかに、アーグの唇が弧を描く。
「さあ、君の罪の重さを、思い知りなさい」
囁きかけたのは、抜け殻の体にではなく、魔剣の鍔にはめ込まれた濃紫の宝石に向けて。
そこに封じられた『アインの心』に対して、直接囁きかける。
またもや濃紫色の宝石に小さな亀裂が走る。
今度は、一度ではなく、二度、三度と……どんどん亀裂が増えていく。
抜け殻の体が勝手に動き出して……両手で握りしめたナイフを自分自身に突き刺した。
ごぼりと、鮮やかな赤が溢れ出す。
響く哄笑。
魔剣にはめ込まれた濃紫の宝石が、その度にひび割れ、欠けて、砕け散る。
そのすべてを見せつけながら、意識が……闇の底へと沈んでいく。
「……ああ。壊れてしまいましたね……」
その様子を目にしても、笑いを堪えようともしない悪意の塊が、床に散った欠片を踏みにじった。
第2章第3話をご一読いただき、ありがとうございます。
あまりにも残酷で、救いのない「もしもの未来」。
アインの心は砕かれ、すべてを蹂躙したアーグの笑い声だけが響く幕引きとなりました。
前作『姉姫様』の登場人物たちまで手にかけたアーグの凶刃。
夢から覚めたアインの魂には、この絶望が「澱」のように溜まっていきます。
次回からは、再び現実の聖皇国に戻ります。
【本編はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
【今後の連載スケジュールについて】
続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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【第1弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】
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ノリト&ミコト




