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第1話・奇跡の痕跡、続く急患~医師たる者のその使命~

第1章 静かな戦が開幕す



      第1話・奇跡の痕跡、続く急患~医師たる者のその使命~



 冗談だろう。



 皇宮で起きた騒ぎの報告と共に運び込まれた患者(インス)を診て、エスパルダ聖皇国・皇都アンシェ主神殿の医務殿総括である医呪(いじゅ)神官長・シリウム=ゾナールは一瞬遠い目をした。


 呆けている暇はないのであくまで一瞬のこと。


 皇宮内で呼吸停止に陥ったインスは、搬送途中で心肺停止の状態になり、救命措置を取られながら運び込まれていて、救命室からすぐさま手術室へと移された。


 身に纏う衣服の状況から、重傷による心肺停止だと思って準備をしたのだが、実際に手術を開始したところで思い違いをはっきりと見せつけられる。



 確かに、想定ほどの重傷ではない。という報告はあった。


 だが、どう見たって裂傷その他外傷による大怪我としか思えない様相で運び込まれているのに、実際には酷い怪我は殆どない。


 いや。全く怪我がないわけではないので、手術自体は必要だったし、蘇生処置はもっと重要。


 精霊補助師(せいれいほじょし)に指示を出して蘇生処置をさせ、息を吹き返したのを確認したところで、手術室の中に微かな安堵が満ちる。


 とはいえ、まだ確実に助かった。とは言い切れないので、その後もできうる限りの処置は行う。


 なにしろ、外傷の軽度さからは考えられないほど失血している。



 明らかに、何らかの奇跡的力が働いて、怪我の治療が成されている。


 しかし……



(ありえない。この出血量を伴うほどの重傷を魔法で治す?治癒する前に命を落とすに決まっている)



 そのはずなのだ。



 何しろ、人が使える回復魔法には、治療を受ける患者の体力がいる。


 怪我や病気を治そうとする体の働き……すなわち、治癒力を高めることで回復を促すのが回復魔法の仕組み。


 当然、高めた治癒力を支えるだけの体力や生命力が必要で、それが足りなければ治療しきれずに命を落とす。



 なのに、インスは治療を受けてもまだ、生きていた。



 確かに、生命力が枯渇して、心肺停止の状態で運び込まれてはいたが、それは回復魔法の使用による体力と生命力の不足ではない。


 もしそうであるならば、ここに運び込まれる前に死亡が確定しているし、今も蘇生に成功するはずがない。


 それに、魔力が一切感じられないままではなおさら。


 ここまで魔力を失っている相手が、魔法による治療を受けて生き残れるはずがない。


 だから今も、精霊補助師……精霊魔法によって治療を補助する神官呪師(しんかんじゅし)……による処置は行われているが、白魔法による回復は行われていない。


 意味がないどころか、白魔法で回復させようとすれば死亡が確定すると分かっているのに、魔法をかけるような医師はいない。


 思ったほど怪我はなくても、()()には違いないので、処置が終わり、症状が安定してきたところで手術室から集中治療室に移送する。



「ゾナール医呪神官長!急患です!!」



 ホッと一息つけたかと思ったところに次の患者の知らせが飛び込んできた。



「……は?」



 その、悲鳴じみた声とともに、運び込まれた患者を目にして、シリウムは思わず絶句した。



 胸にナイフを突き立てられたまま、白く青ざめ、呼吸も心臓も止まった状態で運び込まれたのは、皇宮内神殿の医務殿からインスと共に消えたと報告されていたアイン。



 ほんの、五歳ほどの幼い神官呪師見習いは、皇都西方にある旧都の廃離宮でジャンヌたちと共に発見され、搬送途中で心肺停止し、救命措置を続けられたまま主神殿の医務殿に搬送されてきた。




 心臓が停止してから、ここに運び込まれるまでの時間はインスよりも長い。


 更に、明らかな重傷とわかる、胸に刺さったままのナイフ。


 いや。措置としては正しい。下手に抜いてしまっていたのなら、もう絶対に助からないだけの時間が経過している。


 けれど……



(助かるのか?ここから治療して……?)



 後方支援として廃離宮に送られた神官呪師たちの懸命な延命措置を受けて、それでも心肺停止からすでにかなりの時間が経っていて、いまだに蘇生の兆しを見せないまま、これから、手術したとして……



(五歳……。いや。正確な年齢はわからないが……どちらにしろ……)



 明らかに、インスよりも体力がないのは確実。


 その上、インスよりも重傷。



 だが……



(……やるしか、ない。可能性が僅かでもあるのなら、諦めるわけにはいかない……)



 それが医呪神官の役目だ。



「大至急インゼラ大神官(だいしんかん)にお越し頂け!総員準備!!」



 この主神殿の大神官であり、シリウムの次に優秀な医呪神官でもあるチェスパス=インゼラへの協力要請を命じる。


 緊張と、覚悟を孕んだその声に、慌ただしく次の手術が始まった。


第1章第1話をお読みいただきありがとうございます。


医師であるシリウムから見ても「ありえない」状態のインス。

そして絶望的な重傷を負ったアイン。

本編の裏側で、主神殿の医務殿がこれほどの戦場になっていたとは……。


シリウムたち医呪神官の「諦めない執念」が、彼らの命を繋ぎ止められるのか、ぜひ見届けてください。


【本編はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第1弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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