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第5話・途切れし吐息が告げるのは~思わぬ事実に絶句する~

第3章 君の還りを(ねが)う者



     第5話・途切れし吐息が告げるのは~思わぬ事実に絶句する~




 高位の神官呪師(しんかんじゅし)二人を前に起き上がろうとするアインを止め、インスもベッド脇の椅子に腰を下ろして、シリウムとチェスパスに向かい合う。



 他の神官たちは全員外に出されて病室には四人だけ。



「起きたばかりで聞くのもなんだが、何があったか覚えているか?」



 まず最初に口火を切ったのはシリウム。



 ここは医務殿で、アインは重症患者。



 容態の変化を見逃さないためにも話の主導権は医呪(いじゅ)神官長であるシリウムが握るのが妥当。



「……全部、覚えています……」


「「……は……?」」


「……え……?」



 泣きそうな顔で、ポツリと告げたアインの返答を一瞬理解しきれなくて、シリウムとチェスパスは目を丸くし、インスは息を飲んで絶句した。



「……全部……って……」


「全部、です……皇宮の医務殿で、寝ていたことを……インス様に教えて貰って、怖い力が急に満ちて、部屋中に真っ赤な、魔法陣が……」



 唖然として繰り返したシリウムに応えて、アインはポツリ、ポツリと語りだす。




(……嘘でしょう……!)



 語られる内容を聞きながら、インスは血の気が引いていくのを自覚する。



 体が、震える。



 アインに気付かれないように、ぎゅっと、肘掛を強く握りしめた。



 そっと、意識して息をする。



 そうしないと、今すぐ目の前が真っ暗になって、意識を飛ばしてしまいそうに感じた。



 同じように、シリウムとチェスパスの顔色も悪くなっていくが、インスにはそれを気にかけることができるだけの余裕がない。



 詳細を省き、全体の流れをとシリウムが促せば、こくりと頷いたアインは更に、その日に起こった出来事の、大まかな流れを話していく。



「……お姫さまを、刺してしまったことも……」


「「「……っ……!!」」」



 話がそこに及んだ瞬間、ぎくりと三人共身を強張らせる。



「……魔族のひとが、僕の、手を……」



 アインが苦し気に息を喘がせ、掠れた声を絞り出す。



「とりあえず、今日はここまでだ。これ以上はお前の体が持たなくなる」


「……で、も……」



 シリウムが呼吸を補助する魔法をかけて、まだ続きを話そうとするのを一旦止めた。



「お前、医者である私の判断に何か不服でもあるのか?」


「っ!……いえ……ごめんなさい……」



 わざときつめの言葉を使えば、息を飲んだアインは一瞬にして委縮する。



 そっと、気づかれないように溜め息を漏らして、ちらりとチェスパスとインスの顔を見た。



 どちらも、アインには気づかれないようにしながらも苦い顔。



「「「……………」」」



 三人の視線が一瞬だけ交わって、言葉もなしに役割分担がされる。



「では、私は先に報告に向かおう。ここは頼みます」


「もちろん」



 まず先にチェスパスが口を開き、席を立つ。


 頷いたシリウムは改めて、今度はアインにわかるようにインスを見た。



「お前も、自分の病室に戻るか?」


「いえ……できれば、このままここに……」



 腕を組んで、しかめっ面で告げるシリウムの促しに首を横に振る。



 ふん。とシリウムは鼻で息を吐き、アインを見た。



「余計なことはせずに、二人とも今日はもう寝ろ。それができるなら許そう」



 え……と、呆けたように目を丸くしているアインから、インスに視線を戻したシリウムは、にこりと微笑むインスを見てジットリと目を細める。



()()()()()?」


「ええ。もちろん」



 念押しするように言われて、あっさりと頷いたインスに溜め息を返し、チェスパスと入れ替わりで戻ってきた部屋付きの世話役に指示を出す。



 二人の就寝準備が整えられて、アインがまだ混乱している間に消灯された。



 一つのベッドで並んで横になったインスを、不思議そうに見つめる。



「それじゃあ、今夜は休みましょうか?」


「……ぁ……はい……おやすみなさい?」


「はい。おやすみなさい」



 赤みを帯びた紫色の瞳に見つめられたまま、若干混乱しつつも就寝の挨拶をしたアインは……すぐ隣にあるぬくもりを感じながらすんなりと夢路を辿った。



 しばらく様子を見つめていたインスは、アインが寝入ったのを確認して、そっと息を吐く。



 起こさないようにそうっとアインの頭を撫でて、知らず、強張っていた体の力を抜く。



 途端にドッと来た疲労感に逆らうことなく……


 ゆっくりと息を吐き、目を閉じて……忍び寄ってきた睡魔に素直に身を委ねた。


第3章第5話をお読みいただきありがとうございます。


アインの口から語られた「事件の全容」。

操られていたとはいえ、皇孫皇女で女神の巫女でもあるジャンヌを刺してしまった記憶を鮮明に持っているという事実は、大人たちを戦慄させ、アイン自身の心をも深く傷つけていました。


インスの深い愛に包まれ、ひとときの眠りにつくアイン。

しかし、彼を待ち受けるのは癒えない傷と、残酷なまでの鮮明な記憶。


次回からは新章です!


【本編はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第1弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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