第4話・暗闇の底の導き手~救うは命か、魂か~
第3章 君の還りを希う者
第4話・暗闇の底の導き手~救うは命か、魂か~
苦しい……
痛い……
熱い……
冷たい……
ここは、どこだろう?
どうして、ここにいるのだろう?
辺りは真っ暗で、微かな明かり一つ見えない。
体が、重い。
指先一つ。
ピクリとも動かせなくて、体中に、何か、重いものが絡みついているようで、押しつぶされる。
必死に息をするけれど、その度に頭の先から、足の先まで痺れるような痛みが駆けて、吸うのも、吐くのも、途切れがちで細くなる。
なおさら苦しくなって、頭の奥が割れるように痛む。
脈打つ度に、酷い痛みが。熱さと……
凍えるような冷たさを伴って全身を廻る。
何か、恐ろしいものが、居る。
それらに吞み込まれて、自分が、分からなくなりそうで……
(……怖い……っ!)
水中にいるわけでもないはずなのに、冷たい水の底に沈められたように、息ができない。
(……だ……れ、か……っ)
援けを求める、その心が、途中で途切れる。
ダメだ。と、強く、感じた。
援けを求める?
誰が?誰に?
――そんな事は許されないのに?
誰がお前を援けると?
そんなものは与えられない。
誰が、求めていいといった?
そんな事は許されない。
なぜなら……
ふわりと、何かが体を包み込む。
あたたかなそれに、優しく抱きしめられて……
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「……アイン君……?」
涙に濡れた深紫の深淵がぼんやりとインスを見つめる。
二度、三度と瞬きして、アインはじっと、間近にあるインスの顔を見つめ返した。
「…………ぇ……?」
自分が、どうして泣いているのか、どうして、こんなに間近で、インスと顔を向き合わせているのか分からなくて、アインはこてりと首を傾げる。
「い……っ!?」
途端に、激しい痛みに襲われて、ドッと汗が浮かんだ。
短い、けれども甲高い悲鳴と共にびくりと体が跳ねて、更に増した痛みに声も上げられない。
息すら詰まって、震える体を硬直させてしまう。
「っ!?急に動いたらダメです!君は……!」
呻くアインの様子に、焦って声を上げたインスが言い終わるよりも早く。
看護の神官呪師に鎮痛の薬を投与されて、涙目で痛みを堪えるアインも『思い出す』。
「……酷い怪我を、しているのですから……」
心配そうに、けれどもそうっと頭を撫でて告げるインスを見つめた。
どうやら、同じベッドに寝ているようで、半身を起こしたインスはアインの右側に居て、痛みに震えるアインを見下ろす。
「……インス、さま……は……?」
「……え………?」
潤んだ瞳が、真剣に見つめてきて、インスは一瞬呆気にとられる。
ポカンと、ほんの僅かに呆けて……すぐにふわりと笑みを浮かべた。
「大丈夫ですよ。ちゃんと、治療して頂いています」
答えにアインは息を飲む。
「君より、ずっと、元気ですよ?」
頭を撫でてくれる優しい手に泣きそうになる。
ほんの少し、目を細めて、「よかった……」と唇が微かに吐息を零した。
きちんと起き上がったインスがベッド脇の椅子に移り、先ほどの動きで若干傷口が開いてしまったアインの治療が行われる。
その間に食事の準備もされて、治療が終わったころには届けられていた。
長期間意識不明だったアインは、すぐには普通の食事もできないので、流動食のような病人食。
隣にある休憩室のような場所ではインスへの食事がふるまわれる。
一緒に食事とならないのは、インス用に用意した食事の匂いでアインが体調不良を起こさないようにとの配慮。
誤嚥がないかなどを慎重に確かめながら、どれだけ食べられるかを確認されて。
二人ともが食事を終えたころには、この主神殿の医務殿の総括である医呪神官長のシリウム=ゾナールと、主神殿の大神官であるチェスパス=インゼラもこの病室に集まっていた。
第3章第4話をお読みいただきありがとうございます。
アインを苛む暗い悪夢。
「援けを求めることは許されない」という心の檻から彼を連れ戻したのは、他ならぬインスのあたたかな体温でした。
目覚めて一番にインスの身を案じるアインの健気さに、胸が締め付けられます。
ですが、穏やかな時間は長くは続きません。
次回、第5話では、医務殿の重鎮たちも集まり、いよいよ「アインの事情聴取」が始まります。
果たしてアインが語る「事件に関する記憶」とは……?
【本編はこちら】
姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~
(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)
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続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!
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ノリト&ミコト




