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第2話・覚醒《めざめ》し光は涙に濡れて~無条件のやさしさに~

第3章 君の還りを(ねが)う者



       第2話・覚醒(めざめ)し光は涙に濡れて~無条件のやさしさに~



 インスの他に、医呪(いじゅ)神官長であるシリウム=ゾナールも今日は朝からアインの病室に詰めていて、逐一様子を確認し、事細かな指示が出されていた。



 午前中に一度。午後になって二度。


 同じようにほんの少し、瞼を持ち上げ、ぼんやりとしたまま、また眠る。



 それを繰り返し、流石にそろそろ自分の病室に戻れとシリウムに言われても、インスは頑なに首を横に振った。



「……もう少しだけ……お願いします……」


「お前、そう言って何時間ここにいると思っているんだ?」



 ぎろりと睨むシリウムと目を合わせないまま、インスはずっと、アインの手を両手で包み込むようにして握りしめている。



「……………」



 返事もしないインスに溜め息を吐いて、シリウムも再びアインの顔を覗き込んだ。



 夕方になって、更に三度。


 少しずつ間隔が短くなっているのは当然シリウムも気づいている。


 おそらく、覚醒が近いことも。


 だからインスが自身の病室に戻りたがらないことも分かってはいるのだが……



(……正直、インスもそろそろ限界だ。これ以上、この緊張状態を続けていると、倒れる……)



 朝からずっとここにいるのはもちろん。


 昨夜も気になって、よく眠れていなかったのだろう。


 顔色が悪くなっていた。



 不意に、インスの背が強張った。



「インス?」



 急に緊張を高めたのが分かって、シリウムがインスの顔を見る。



 息を飲んで、軽く目を見開いたインスはアインを凝視したまま、ほんの僅か、手に力を入れていた。


 握りしめていたアインの手を、キュっと、少しだけ力を込めて握る。



「……っ!」



 瞬時にシリウムはアインに目を戻し、手を振って無言で周囲に指示を出す。


 すぐに周囲の緊張感も高まり、音もなく動き始めた。



「…………ん……」



 微かな呻きが、アインの唇から零れて、再び瞼が持ち上がる。



 ぼんやりと、一点を見るとはなしに見つめていた視線が、動く。



「っ。……アイン君……」



 思わず身を乗り出して覗き込んだインスが、掠れた声でその名を呼んだ。



 ふらふらと彷徨っていた視線が、声に気付いたのかインスを捕らえ、二度、三度と瞬きを繰り返す。



「……い、んす……さま……?」



「「……っ!!」」



 零れた吐息に、インスも、シリウムも、室内にいた他の神官たちも息を飲む。



「……アイン君。分かりますか?」


「……こ、こ……」



 そっと、両手で握りしめていたアインの手から、右手を外して、頭を撫でる。



 インスの問いかけに、アインは不思議そうに周囲を見回した。



「……ここは主神殿の医務殿だ。分かるか?」



 アインに応えたのはシリウムの方。



 フッと、アインの視線が音に反応してシリウムの姿を捕らえ、数瞬の沈黙ののち、息を飲む。



「……ぼ……く……っ……」



 ハクハクと、喘ぐような息を吐いて、声を絞り出す。


 様子に、すぐさま精霊補助師(せいれいほじょし)が呼吸を補助する魔法をかけた。



 一度、苦し気に息を飲んだアインはすぐにその魔法に身を任せ、呼吸を任せる。



 けれど、顔を歪めたまま。浮かぶ涙を必死にこらえる。



「アイン君っ」



 思わずインスは呼び掛けて、そっと、涙をぬぐう。



「……ごめ……なさ……っ」



 呼吸を補助されて、息苦しさはないはずなのに、苦し気に声を絞り出す。



「っ。……」


「インス!」



 咄嗟に、ベッドに横たわったままのアインを抱きしめる。


 動きにシリウムは咎めるように呼ぶが、もちろんちゃんと加減はしている。


 決して押しつぶしてしまわないように、けれども、しっかりと、抱きしめた。



「……アイン君……」


「ごめ……なさ……ぼ、く……」


「君が謝ることはありませんよ」



 優しく、囁く。


 微かに、いやいやするように首を振って、必死に涙を堪えるアインを抱きしめ、撫でて、宥める。



「君は、正しい選択をしたんです……。まだ、早すぎたけれども、間違っていません」


「……で、も……っ」



 しゃくりあげるアインの右肩を、ゆっくり撫でて、軽く、本当に軽く、撫でるように胸を叩く。


 ナイフで刺された左側の胸の傷に響かないように、そうっと。



「君が、正しい選択をしたから、私は今、ここにいます……」


「……インスさま……」



 涙にぬれた神秘的な深紫の、黒にも見える瞳がインスを見た。


 ふんわりと、その女性的で優しげな顔に微笑を浮かべて、インスはアインの視線を捕らえる。



「ありがとう」


「……っ」



 その言葉に、一度大きく息を飲んだアインは……



「……ぁ……!……」



 何かが決壊したかのように泣きだした。



 唖然として、シリウムも、部屋にいた他の者たちも絶句する。



 それは、アインが神殿に訪れてから……保護されて以来、初めて、年相応の様子を見せた瞬間だった。


第3章第2話をお読みいただきありがとうございます。


アインが、ようやく本当の意味で「目覚めた」瞬間。

その『還り』をずっと(ねが)っていたインスにとっても待ちに待った瞬間です。


そして、常に何かに怯える様子のアインが、初めて年相応の子供のように泣きじゃくる姿。

それを目にして、シリウムたちも唖然としていましたが……。


次回は、泣き疲れて眠ったアインと、それを見守るインス……

そして目覚めてもなおまだ残る「理不尽」が明かされます。


ここからさらに、二人の絆は深まっていきます。

また明日、お会いしましょう!!


【本編はこちら】


姉姫様は魔族を斬りたい!~最愛の弟皇子を救うため、女神の巫女は呪いをかけた魔族を探します~

(https://ncode.syosetu.com/n1170lj/)


【今後の連載スケジュールについて】


続きは明日22時から、毎日1話ずつ更新いたしますので、どうぞお見逃しなく!


【ミニコラム掲載中!】


活動報告にて、キャラクター紹介や用語の解説などを不定期で掲載しております。ぜひチェックしてみてください!


【読者の皆様へのお願い】


「面白い」「続きが気になる!」と感じていただけたら、ぜひ【☆☆☆☆☆】やブックマーク、感想をいただけますと、連載を続ける何よりのエネルギーとなります。


また次回もどうぞよろしくお願いいたします!


【第1弾は完結まで執筆済みです。よければ最後までお付き合いください。】


【本作は「カクヨム」にも投稿しております。】


――――――

ノリト&ミコト

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