何のために
書けば書くほど楽しくなってきます。
「突撃!進め!!」太い声が晴れ渡る青空の下、響き渡る。
俺たちはその声に従い進むしかなかった。だがここではまだ死ねない。
俺を愛してくれる者がいる限り。笑顔で送りだしてくれた家族を残して死ぬものか。
その思いを胸にひたすらに、単調にそして確実に敵を死に追いやっていく。
罪悪感がないとは言わない。
しかし、「殺さなければ殺される」それがここでのたった一つの絶対的なルールだった。
彼らにも俺と同じように愛する者、守るべきものがあるはずなのはわかっているだがここで少しでも情けをかけたら殺されるのはこちら側なのだ。だから殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、殺す、止まるな、殺し続けろ、殺すこと以外考えるな。
※
目が覚めるとそこは何もない、いやただ白だけが在る形容しがたい空間だった。
ここはどこだ、俺は行かなければならない。まだ戦争は終わってない。
こんなところで止まっていてはいけない。走れ止まるな動き続けろ。帰るんだ。愛するすべてが待つ場所に。
「こんにちは、一条孝さん」
声がした。ただ一言なんて事のない言葉を放っただけのはずなのに、まるで自分に憑いていたすべてが
なくなった気がした。そして気が付くと足を止めていた。
「ようこそ、幽世へ。あなたたちには天国や地獄といったほうがわかりやすいですか?」
どこか人間離れした中性的な顔立ちをした【何か】はそう言った。
「まだ、戸惑っていらっしゃいますか?貴方は死んだのです。仲間の流れ弾に当たってね。」
死んだのか。結局、何も守れなかった。今まで自分にできることはすべてやってきた。
だから後悔はない。そう、思いたかった。今まで死ぬ気で生き抜いてきた結果、仲間の流れ弾で死ぬなんて何のために生きてきたのかもうわからない。
早くに戦場に出たため嫁も取れず、子孫を残せなかったこの親不孝者を両親は許してくれるだろうか。
恩返しもできず、先立つ息子を想って泣いてくれるのだろうか。
何もしてあげられなかった。最後に一目見たかった。
「貴方はなぜ泣いているのですか?」
【何か】はそう尋ねた。
泣いて、いたのか。もうとっくの昔に涙など枯れたと思っていた。
自分にはまだ人の心は残っていたのか。
「貴方は帝国軍人として立派に戦いました。人を殺めたことは決して誉ではない。しかし本当に守るべきものを理解し、その命までささげた貴方には敬意を表します。よって、貴方にはなんでも一つだけ望むものを与えましょう。」
俺の望むもの、そんなこと一度も考えたことがなかった。幼いころから「帝国のために在れ」と、そう躾けられてきた。だがその縛りがなくなった今、俺は何を望むのか。本当の願いは何なのか。
そう考える過程で気づいた。俺は最初から願いは一つではないか。「愛する者を守りたい」その一心ですべてを乗り越えてきた。ならば望むものはただ一つ。
「俺に守りたいものを守れるだけの力をくれ!もうこんな思いはしたくないんだ!!」
俺がそう叫ぶと【何か】は唱えた。
「我、有限ヲ超越セシ神【カオス】ガ世界ニ命ジル。彼ノ英雄ノ望ム力ヲ我ガ前ニ顕現サセヨ。」
すると、何もないはずの空間が捻じれ、弾け、収束し三つの光を生み出した。
「これが貴方に相応しい【三創神】を司る能力です」
その三つの光は俺も胸に勢いよく飛び込んできた。
「三創神とは天地の神【ゼウス】、海の神【ポセイドン】、冥府の神【ハデス】のことで、その力はその神々の力の一部を借りて成り立っている。」
神の力。それがどれだけの力を有するか、まだ見たことのない孝ですら危険を察知できてしまう。
入ってきた三つの光に押しつぶされそうだった。
「その力はあまりにも強大すぎる故こちらで少し制限をかけさせていただきます。」
そういうとカオスは孝の胸に手を置き見事に力に制限をかけて見せた。
「力の内容は私でも理解ができるものではないので、次の世界でじっくりと試していってください。」
カオスがそういうと俺の意識は深く沈んだ。
沈みゆく意識の中カオスが何かを呟いた。しかし沈みゆく意識の中それを理解することはなかった。
その結果が最善か最悪かそれを知るはカオスただ一人となった。
書き終わったら時間が、、、無くなってる