表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士Aの革命前夜  作者: 鳩ろっく〈サークルアカウント〉
前章 ある夜の日の事。
1/16

第零話 

0話となります。1話と文脈的な繋がりはないので、1話からお読み頂いても結構です。

 ーードガン!!!

 ドアの蹴破る音。空を裂くように落ちる雷の音。


 かつて賑やかだった夜の王宮は静まり返り、(いかづち)のみが光を照らす。


「とうとう本人がご登場って事ね」


 王宮の回廊、夜の川の様に冷え切った大理石の上に二人は立っていた。

 一人は羽のついた女、もう一人は黒髪の男だ。


「…赤子が寝てるんだ。静かにしてくれないと困る」


 雨音の中、それでもはっきりと聞こえる声で男は言葉を放った。手に握りしめた杖の先は女の方に向けられている。


「外は雷よ。既に十分うるさいと思うわ。赤子には関係のない話だわ」

 女は赤く冷たい瞳で男を睨んだ。男に怯む様子はない。


「関係ない?笑えないね。宴会後の深夜を狙っての奇襲。お前の意図は見え透いてる。…スワロウの姿が見えないな。いる事ぐらいは分かってる」

 男も女に呼応するように睨み返した。


「よく分かるわね。スワロウは一つ前の部屋で待機中よ。『弟の血は見たくない』ってね。馬鹿馬鹿しいわね」

 女はそう言うとニタリと微笑んだ。


「そうだな。馬鹿馬鹿しい。所で目的はこの杖か?」


「それだけじゃないわ。その杖だけじゃ私達の計画は完結しないわ。あなたの"魂"。それが必要だわ。」


「そうか…やりたい事は分かった。お前はもう十分暴れたはずだ。妻も友も…この一夜で失った。」

 男は杖をより一層強く握りしめる。


「飛んで火に入る夏の虫よ。もっとも今の季節は夏の終わりかけだけれどもね。立ち向かって来たから追い払った。自分を害するものだもの」


「この気に及んで冗談か。肝が座ってる」


 男は杖に魔力を込め始めた。杖の先の石は青色に光り始める。光はほのかに回廊を照らす。


「それは結構。私にとっては褒め言葉よ」


 女も依然として動じる様子はない。静かに時が過ぎてゆく。


「…子は手にかけるな。お前を害してはいない。お前の目的は俺だ。話はここの二人で完結だ」


 男は羽織っていたローブを脱ぎ捨てた。ローブは宙を舞い、冷たい石床の上にはらりと落ちた。


「二人…ねぇ。残念ながら二人じゃないわ。見えないだろうけれど」


 瞬間、男の両隣を風が吹き抜けた。脱ぎ捨てたローブが再び動く。


「魔力は感じる。近くに居るな。…二人だろうが、三人だろうがこの杖を渡さない。俺は命を掛けれる」


 女は男へ近づく。彼女の取り出した短剣に杖の光が反射した。

「命も杖も私は貰うわ……エルベン・ローズムーン!!!」


 男は魔法を放った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ