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Epilogue≪another≫

 虹色の光で作られた中を浮遊し、流れに身を任せて飛んでいく。いつものことながら酔いそうだな、とラドンは眉根を寄せた。時空を飛び越えるのだから、できれば生身の肉体ではなく乗り物でも用意して欲しい。しかし、大胆な外見にそぐわずに、それだけで容量が限界を迎えるような繊細な構造になっていると、出発前も説明を受けたことを思い出す。結構長い期間、あの世界には滞在したつもりだったのだが、帰りも結局行きと同じ方法なので、乗り物を入れられるまで研究が進んだ、というわけでもなさそうだ。


 出口が見えた。本格的に気持ち悪くなり始めていたので、口を抑えながら急いだ。




 空間から外へ出ると、急に重力がかかってきて、体が重くなる。眉根を寄せながら膝をつく。


≪ラドンくん、だいじょうぶ?≫


 タイニーに覗き込まれた。うっかり吐きでもしたら汚物塗れになるぞという意味で、手で追い払い、下から撤退させる。固い床でも視界がぐるぐると回った。だが、あの世界に行ったときはもっと酔ったせいで倒れるに至ったので、膝をつく程度で済んでいるのはマシな方だ。


「ラドンお疲れ!」

「お帰りなさ~い!」


 騒がしい声が聞こえてくる。先ほどまでいた世界も大概騒がしい者がいたが、こっちもこっちでいたな、と思いながらラドンは首を持ち上げた。白衣を着た職員たちが、ラドンの無事の帰還を喜んでいる。


「ただいま。タイニーから聞いてる。危険数値、だいぶ下がったって?」

「うん、ラドンたちのおかげでね!」


 女性職員が忙しなく機械を操作し、キーボードを叩きながらも答える。言われて天井一面に表示されている、様々な並行世界(パラレルワールド)の各数値を見上げる。ラドンが身を置いていた世界線の値に目をやると、確かに他のものと大差ない程度の数値にまで落ち着いていた。他の世界線に与える影響も、とくに表示はない。危険信号の赤ランプも、点滅していない。


 上手い事やれたのか、とようやく、ラドンの口から安堵の息が漏れる。

 ぴょこん、と肩に乗ってきたタイニーと共に、天井で動き続ける数値を見つめる。


「これで、また数値が急に上がったりしないといいんだがなぁ」


 眼鏡をかけた白髪頭の職員の言葉に、無意識に「大丈夫じゃねえの」と答える。意外そうに、周りの職員が見て来るが、ラドンは根拠もなく言い放った。


 脳裏に蘇るのは、敵であった者同士が他愛もない話をしている姿。それぞれが、それぞれの課題に向き合うために歩いて行く姿。


 戦争で、〝聖獣〟が戦争の道具として使われている場面を目撃し、どこか複雑そうな気持ちを抱いて儀式に臨もうとしているガイア。己の魔力の弱さを痛感し、気楽な態度は目立つが真剣な面持ちで悩む姿を見かけるようになったクォーツ。自ら憎い故郷を訪れて、気持ちの整理をつけようとするオヴィアス。そんな主人たちを支える、〝聖獣〟。全てがそうだとは言えないが、付き従うだけではなく、意見を言い合える相棒。


「どうして大丈夫だなんて言えるんだ? 今回だけで、この世界線に行ったのは二度目だろう? 最初は大陸を統一してでも戦争を止めようとした。それでもまたこんなに、他の並行世界に影響を与えそうな深刻な数値を叩きだしたのは、ここだけなんだぞ? それで何とかしなきゃって話になって、お前が行って来たんじゃないか」

「俺は多分、本当はあの世界に行く必要、なかったんだと思ってる。それに、人間なんざ、いるだけで争う生き物だよ。それが今回身に沁みた」


 腑に落ちない様子で眉を顰められる。


「なら、尚更大丈夫と言い切る材料にはならないだろう」



 ――無数の並行世界を観測し、管理が可能となったこの世界で。ラドンは世界を見つめ続ける。魔法と科学の両方が、同じだけ重要視されている中、魔法文明が栄えた世界と、科学文明が栄えた世界、第三の文明が栄えた世界もある。

 ……きっとまた、どこかの世界に飛ばなければならない。それでも一つずつ、向き合っていくしかない。

 その中でも、今回ラドンが出向いた世界では、確信して言えることがある。



 戦争を止めたからと言って、後悔は消えはしないし、やってきたこと、やっていくことを正しいと確信を持てるかは別問題。もがいて足掻いて、それでも前に進むしかない世界。


 そんな、正しさが分からない世界で人間は、間違えて、正してを繰り返し続ける。正すことができなくなったとき、世界はきっと終わりを告げる。

 けれど、ラドンが散々関わってきた彼女らは、血を吐いてでも、正そうと戦える者達だった。

 そして、仮に彼女らが間違えたとしても。


「あの世界には、間違える人間を、正してくれる奴らがいるからな」




 




FIN

これにて完結になります。


実は、このお話は私がまだ高校生の頃に書いた小説で、当時は僅か7000字程度のお話でした。部誌の10ページくらいに収めたので仕方なかったのですが、思う存分世界観を広げられたことが何より楽しかったです。コンクールに出して落選したものではありますが、その後また色々手を加えた結果、この形となりました。


また、ガイアたちがとても好きで、本当は別エピソードもあります。(ラドンの正体も結局このお話では語り切れませんでしたね…無念…)どこかの機会にそちらも公開できたらいいな、と思います。


この度は拙作をお読みいただき、ありがとうございました!

もしよろしければ評価等お願いいたします!

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