第5話 君が初めて歩いた日
基本、第一話の後書きのテンションで執筆しております。
山を割った原因の、勇者一行が長の死体の前で、何やら話し合っている。
「嫌な予感だなんてだ、大丈夫ですわよ!!」
姫が勇者を励ますように言う。
「所詮、その・・・畏れなんたら山の伝承なんて問題ないのですわ!!どうせ古い伝承ですし、私たちは世界を救った勇者パーティーなのですのよ!!今更どんな怪物が来ても、ドンと来〜いですわ!!」
王家から禁域指定を喰らっている山の扱いは、それで良いのか王家の娘・・・。
そう、誰もが思った次の瞬間・・・
ズズーン、と大きな音が山の方から響いてきた。
「ッ!!全員警戒態勢!!」
ガイウス卿がそう、叫んだ気がした。
次の瞬間、地面が大きく揺れ、勇者たちは地に伏した。
『よし!!自己紹介は終わったようじゃし、さっさと山を降りて町に行こうではないかー!!』
ゼルが片手を腰にあて、もう片方の腕を山の麓のほうへビシっと指した。
『貴方はまず、主に対する言葉遣いを改めてください』
『え〜!だってコレ、ワシの素なんじゃもん』
ゼルの言葉遣いがなっていないことを気にしたティナが、ゼルを嗜めるが、ゼルにあっさりとかわされる。
『ヘッ!ロリババアが粋がって言ってんjy
ーートォウ!!
グワー!!』
ティナへの援護射撃のつもりではないが、ゼルをからかいたくなったペルギムは、そんな言葉を口にしようとするが、ゼルにしっかりと殴られる。しかも、笑顔で。
3人の人間がその石の中で仲良く談笑しあっている。
実に平和的である。1人、殴られていた気がするが。
『では、山を降りるか』
『おう!!出発進行!!なのじゃー!!』
『ですから主に対する言葉遣いを・・・』
ゼルサマを注意するティナの声は、続かなかった。
コロコロコロー
山の斜面を猛スピードで石が転がりだしたからだ。
中の者は等しく皆、竜巻に巻き上げられた家にいるような感覚を味わうことになった。
『オロロロロロロ!!』
ペルギムが振動に耐えきれず、口から妙にキラキラとした、モザイク状の物体を放出した。
これは絶対に、見せられないよ!!案件である。
『こりゃー!!ペン、吐くな!! 吐くんじゃない!! ソレを今すぐ戻すのじゃァーッ!!』
『フッ・・・さっき殴ってきた賢者サマにプレゼント・・・だぜ、うっ、オロロロロロ!!』
ティナは目を閉じて祈るように手を組んでいた。
『・・・』
若干、その顔が青いように見えるのは気のせいでは無いようである。
石が心配しているのを察知したのだろう。
『・・・私は貴方様が成すことに否、と申すことはございません』
そう気丈に言いはするが、ティナの組んだ手は、機関銃が撃てそうなほどガクガクと震えていた。
コロコロコロー
石の転がる衝撃に、流石にゼルサマも耐えきれなくなったのだろうか。
『うッッ!!ペン・・・』
『どしたー?』
ペルギムはすでに、海岸に打ち上げられた魚のように、虚な目をして大の字に寝転がっている。
『ワシも・・・ワシもお主の後を追いそうじゃ・・・』
そんなペルギムの様子に構わず、この世の終わりのような顔で己の限界が来たことを、ゼルはペルギムに申告する。
がしかし。
『フーン』
ペルギムからは素っ気ない、適当な返事が返ってくる。
『フーンではないわァァァ!!貴様に恥じらうと言う概念が無いのは知っておるが、ワシは花も恥じらう乙女なのじゃぞ!?』
そう言ってペルギムの胸ぐらと思わしき所を掴み、ガクガクと揺さぶった。
『・・・ロリババア?』
『グフゥゥゥウウ・・・』
ゼルサマも、ペルギムのロリババア発言を聞いても手が出ないほど衰弱しているようである。
ティナは残念なことにというべきか、当然だというべきか、とっくの昔に白目をむいて倒れ伏していた。
ペルギムは目を細め、何処か遠くの方を見ている。
『・・・俺、ばあちゃんの家で飼っていたネズミが、回し車の中で足滑らせて一緒になって回っていた姿見て、腹抱えて笑っていたが・・・今、そのネズミの気持ちが痛いほど分かるぜ・・・。あの時はごめんよぉ・・・ハムサブロー・・・』
その目はおそらく天国の方面を向いていた。
『ぐぇぇぇぇぇ・・・。ほ、本格的になんとかせねば拙いのじゃ。移動のたびにコレでは乙女の名誉が・・・』
流石に全員が嘔吐しそうな状況であるならば、改善せねばなるまい、と石は考えた。
『我の移動方法が嫌ならば、変更するが?ティナは寝ているようであるし』
そう、石が提案すると
「おお、まじかよ!!」
「イヨッシャー!!あ、ナノジャ〜」
2人は雄叫びをあげながら食いついた。寝ているはずのティナの眉間が一瞬ビグン!!となったのは見間違いではないだろう。
石は安堵したかのように表面が滑らかになった。・・・意識上で嘔吐されるのはその石にとってあまり気分の良いモノでは無かったのだろう。3人がゲェゲェ言うたびに、ピクピクとその石の表面が波打っていた。
『では、人間として生きていた貴様らの移動方法は何だ?』
石が虹色の模様を波立たせながら、中にいる者たちに質問する。
『魔法で飛んでおったのじゃ』
『魔法だと?なんだそれは?』
どうやら石は魔法の存在を知らないようである。
ペルギムは呆れたようにゼルサマの言葉に突っ込む。
『それ一般の移動方法じゃないだろ・・・。人類ってものは、昔から二本の足で大地を踏み締め、歩くものだろう?』
至極真っ当な意見である。
『ふむ。その一般の方法とやらを試してみるか。魔法というものは、我にはまだ使えない故な』
魔法が石の興味を引いた、とゼルは思ったのだろう。
『なら!!ワシが後でレクチャーしてやるのじゃ!!』
と、片手を挙げ、目を輝かせながら飛び跳ねた。
ペルギムは、うんざりしたようにぼやいた。
『後にしてくれ。・・・しかし俺たちじゃあ見本を示すことができなさそうだな・・・』
『あそこのデッカイ芋虫の下に集まっておるのは人では無いのか?』
そう言ったペルギムが指差した方向を見てみると、焼け焦げた小山ほどの大きさのナニカに群がる、二足歩行の生物が見えた。
『あれの動きを真似れば歩けるようになると思うぜ?・・・体の形を変えれることができるのならな』
『あーッ!?』
ゼルがシュババッと走り、
『お主ー!!移動方法を変更すると言ったから期待したのに上げて落とすのは最低なのじゃーッ!!』
絶望に染まった声で出せ出せ、と言わんばかりに両手でペチペチと見えない壁を叩きながら叫ぶ。
このまま青い空を延々と眺めることになるのかと、ゼルの胸中に不安が充満していく。
しかし石には余裕があった。
(ハッハッハ、貴様ら何を言っておるのだ。体の形状を変えることくらいは楽にできるのだよ!!)
『<慈兆磨練>!!』
ーーズゴゴゴゴゴ
そう思いながらその石は、自身の体を変形させる呪文を唱え、ウゴウゴと体の形状を人間の形に変えた。・・・見た目はペプ○マンのようであったが。
誤解を解くために書き加えると、ぺ○シマンをだいぶ細くした、鈍色と虹色に光る人型不明物体である。
○プシマーン!!
これはただ石像が立っているだけでは無かろうか?
『ごめんよハム・・・ゴロー?ん?ンンン゛ン゛ン゛!?』
ペルギムは驚きで手をばたつかせながらゼルの元に駆け寄った。
『もー嫌じゃー!!せっかく長い年月かけて我慢したというのに、移動するたびにこれでは拷問では無いかァ−!!』
『おい、ゼル!!見ろ!!』
そして、ゼルが着ているローブの裾をグイグイと引っ張り、外の状態を指差す。
『黙るのじゃ、ジャンガリアンハムスタァーッ!!』
『誰が愛玩用ネズミだ!! って違う!! こ・・・この石が立っている!立っているんだぜ!?』
『なら貴様はモルモット・・・何ィーッ!! それを早く言うのじゃ!! どうして変形できた? 錬金術か何かなのか!? ま、まあいい!! 方法は後でゆっくり聞かせてもらうとして、今はともかく、今度こそ出発進行じゃー!!』
ゼルは驚きながらも、興奮した様子で石に先に進もうと言った。
あの死骸に集まる者たちは、下の方に生えている二本の折れ曲がる棒、ペルギムによると“足”で移動するらしい。
つまり・・・
『この棒を前に出せば良いのだな』
『そうじゃ!! あぁ、この一歩がこれから我らの進む、栄光に満ち溢れた道を踏み締める最初の一歩なのじゃな!! 』
ギィギィといった金属音が鳴るかと思われたが、実になめらかに足が持ち上げられていった。
石の体は陽光に照らされ、キラキラと、まさに神が降臨したかのような荘厳さを醸し出す。
ーーパアアアァァァ
『・・・俺さ、なんか嫌な予感がするんだ』
ペルギムは自身の予感を可能な限り、顔に出している。その顔は、先程フラギルに揺られていた時に開いた、悟りの境地の顔のように、にこやかであった。
『さあ行くのじゃ!! 大地を力強く踏み締め、己が存在を世界に証明するのじゃ!!』
そうゼルは歓声をあげながら言い、石は足を踏み出した。
そして、その足は大地を力強く踏み締め・・・
ドグヴォッッツ!!という耳を疑うような音と共に大地に大穴を穿ち、ビキビキィッッッ!! と、空けた大穴の周りに、地割れを引き起こした。
そして
「ーーアフスゥン」
バランスを崩した石は、気の抜けた声らしきものを発しながら、その大穴の中に倒れ込んだ。
ドゴオオォォォォォン
ーー地面が激しく泣き叫ぶ。
もうもうと、砂埃が舞った。
「力入り過ぎんだろ!!」
と叫ぶペルギムの声が、地響きの音に紛れ、かすかに聞こえた気がした。
「グッ・・・特に被害はなさそうだな。」
(今の地面の揺れは何だ?地震か、それとも・・・)
内心自分が放った聖剣の一撃が、また何かやらかしたのかとヒヤヒヤする勇者の耳に、他のパーティーメンバーの声が聞こえてくる。
「勇者様!?ご無事ですか!?」
「ヒロキ様ー!!ヒロキ様ー!!」
姫とメリッサさんが勇者を心配している。・・・両者はお互いをグイグイと押し合っているが。
結果、なんの邪魔も入らなかったガイウス卿が、1番最初に勇者に声をかけることができた。
「ーー私が思うに、あれは山が崩落でもしたのではないだろうか。ともかく、長の死体の処理と山の修繕は撤退させている軍に任せて、城に帰ろうではないか!!きっと王様も、首を長くしてお待ちになっておられるだろうからな!!」
ガイウス卿の言葉の魅力的な内容に勇者は、自然と引き寄せられる。
確かに、長との戦いでパーティーは疲弊しているし、たまには王宮の豪華な
食事も食べたい。
大体、今現在俺たちを襲ってくるモノがいないということは、少なくともこの嫌な予感は、今、この状態を指し示しているのでは無いのだろう。うん、キットソウニチガイナイ。
おおかた、このような内容で勇者はそう結論付けたに違いない。
だから勇者は・・・
「ガイウス卿に賛成だ!!俺達は勝ったんだ!!堂々と城に帰ろう!!今夜はパーティーだ!!」
帰る決断をする。そして不吉な予感は、山へと放棄したのだ。
姫がメリッサと押し合うのを止め、口に手をあて、薄らと笑う。
「ぐふふふふ!帰ったらお父様に相談して、ヒロキ様との婚約を認めてもらうのですわっ!!」
・・・姫から、王族のイメージをぶち壊すような笑い声が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
カエルでも鳴いたに違い無い。
勇者たちは、城に帰るため、長の死骸を後にして、陣営所まで歩いて戻って行った。
『あれが歩くという動作だ。オーケー?』
ペルギムが、去っていく勇者たちを指差しながら言った。
石は、わざわざ勇者一行を見るために、苦労してクレーターから這い上がってきたのだ。
『フム・・・』
『間違っても!!足を踏み出しただけで地面にクレーターを形成するモノでは無いからな?』
『・・・以後善処する』
反省を示すかのように、虹色の部分がペカペカと光った。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます。
「はぁ・・・はぁ・・・もっと啓蒙を高めたい!!」・「力になるため、この身を捧げたい!!んほぉぉぉンン!!」と思われた方がいらっしゃいましたら、ぜひぜひ高評価、ブックマークよろしくお願いします。
また、「啓蒙が足りん!!ここはこうした方が、もっと主の御心が伝わる!!」・「誤字るとはナニゴト!?」という箇所がございましたら、ぜひ報告をしてください。よろしくお願いします。なおその際、筆者の心が砕けるのかもしれないので、あなたの人差し指と、私の人差し指がくっついて通じ合う、やさしい世界でお願いします。