第4話 石身中の賢者達
ピッカー
「クウェァァァァァ!? アァっカキアァァァァ!?」
まばゆい光の奔流の中に、その石は在った。
その石は、長らく、いや全く光を浴びていなかったため、軽い混乱状態であった。
悶えるかの如くコロコロと左右に転がる。
しかし、さらにそんな彼|(?)を混乱させる出来事は続く。
『うぉ!? こいつ、動いたぞ!!』
『ぬおっ!? 光!! 光じゃァァァ!! 光ッ!! 光が見えるぞぉぉぉ!? ええい邪魔するなペン!! 外が見えぬではないか!!』
『ウッ!!』
『あぁ主よ・・・この日がくるのを待ち侘びておりました・・・』
突然、3人の声が石の体全体に響く。一人は張り倒された時の振動もあったが。
この事態にその石は思わず
「ぬっ? な、何者だ貴様ら? 我に直接語りかけているにしては、違和感のある喋り方だな」
と疑問の声を発する。
しかし、
『当たり前じゃ。ワシら3人お主の体の一部なのじゃからな!! ワァーッハッハァー!!』
『ゑッ』
石が持っていた予想の斜め上の答えが、石の中にいる三人のうちの一人から帰ってきた。
『・・・我は、一体・・・?』
かなり混乱しているのであろう。そうと判別できるほど、虹色の部分が目まぐるしく光っていた。
石は、先ほどの声を聞くために、意識を内部に向けた。
石の意識上で、白く輝くモヤのようなものが徐々に人の形をとっていく。
『主よ。貴方様は、私達が信じる“メイヘネ教”の口伝に伝わる“創造の残滓”です』
そう言って、石の意識に浮かび上がってきたのは、先ほど勇者パーティーで聖女と呼ばれていた女と似たような服を纏った、白髪ではあるが、若い女性であった。
彼女の話は続く。
『貴方様は所有者に絶大な力をもたらす神世の鉱石・・・。故に我ら石の民が守っていたのですが・・・』
『その噂を聞いて、得ようとしたらお主に吸い込まれたのよ!!』
大きな三角帽子を頭に乗せ、足元までに広がるローブに、ミニスカートを纏った、イヤにジジ臭い言動をする少女。
そして、
『いい武器になると思ったんだがなぁ・・・』
ツルリと禿げた頭をポリポリと掻きながら筋肉質の、それでいて精悍な顔つきをした男が、石の意識上でハッキリと姿を捉えられた。
『主よ、貴方様は私たちのことを覚えておいでですか?』
そう言って、3人全員が石の返事を待つために、興奮を抑えて沈黙する。
女性は手を組みながら跪き、目線を上にして石を見上げるような格好である。その姿を見た者は皆、モヤの体ではあるが、一様に美しいと思うであろうと容易に思えるほどだ。
その他の二人は、目をカァ!! と見開き、フンス!! フンスー!! と鼻息を荒くして待機している。
『いや、そもそも貴様らが誰かを知らぬな』
全く身に覚えのないことを聞いて、逆に落ち着いたのであろう。石は、この3人を吸い込んだ時の事を聞いているのだと理解し、そう返答した。
あれほどピカピカと虹色に発光していた体が、今は一部分が光をキラリと虹色に反射するのみである。
『成程、およそのことは理解した。して、貴様らは一体どういう存在なのだ? ゴーストか?』
『ん? ゴースト? ・・・それに近しいモノ、とでも言っておこうかの。ワシら以外のここにやって来た奴らは、ほとんど消えていったがのぉ』
少女は、石の質問に違和感を覚えたが、わざわざ指摘するのも面倒だと思った。そして若干がっかりしたような表情で、少女が石の疑問に答えた。
『・・・意識が無い間の出来事とはいえ、すまぬな』
『気にするでない! ろくに調べもせずに、持って帰ろうとしたワシが悪いのじゃからな!! ・・・そうじゃ! 悪いと思っておるのなら、街や都市に行ってはくれぬか? 久しぶりに人々の生活が見たいのじゃ〜』
了解の意を示すかの如くピカピカと石が明滅する。
『・・・』
聖女然とした女性が咎めるような目つきを少女に向ける。
そんな視線に少女が焦ったように、両手をバタバタさせながら話題を変えようとする。
『ーーそ、そういえば自己紹介がまだじゃったの! ワシの名はゼル=シエラ。“大賢者”ゼル様とはワシのことよ!! 4000年間ここに篭って編み出した魔術の秘奥、もし機会があれば見せてやろうではないか!!』
『気前が良いなロリショージョ。確か300年ほど前は本物のババアじゃなk
ーーその前はれっきとした美女じゃ!!
ぐふっ!? わ、分かったから打たないでくれ・・・。俺はペルギム・・・。
ーー二つ名も言うのじゃぞー?
えっ? これ二つ名も言わないとダメなのか? ハァ・・・。俺は“悪夢”のペルギムだ。皆からはペンだなんて呼ばれている』
『なっ!? 先に主に自己紹介されてしまうとは! くっ、一生の不覚!! これもゼルが余計なことを言ったせいですからね!?
オホン!! ・・・失礼いたしました。私は“司祭”のティナ=エリエムです。ティナ、とお呼び頂けると幸いでございます』
どうやら、石の中には凄い人たちがいたようである。
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