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恋の色  作者: メダカのユウ
7/9

第7話

ヤッベ、投稿する話間違えてストックの方を出してました……こっちが続きです

「さっき見たよ。確か理科棟の方に行ってた」


「そうか。ありがとう」


「今度ジュース奢ってね」


「ブラックコーヒーなら奢ってやる」


「僕が苦いの苦手って知って言ってるな?」


「もちろん。じゃあ探してくる」


 同級生の彼に礼を言い、足早に理科棟に向かう。

 彼女はまず、自分の教室に寄ったあとに理科棟に向かったことが数人の生徒への情報収集で分かった。

 自分の教室か……。もしかしたらFとやらは彼女のクラスかもしれないな。

 しかし、理科棟に行ったのが気になる。もしかしたらそっちにFは居るかもしれないが、あそこには生徒が多く居る教室はない。ましてや放課後だ。放課前ならまだしも放課後には少人数の茶道部や物理同好会ぐらいしか居ない。

 そして茶道部には男子は確か居なかったはずだ。よって彼女は茶室には居ない。

 となれば物理同好会……。パッと思いつく人間は俺の友達には1人だけいる。そいつから聞いた話によれば男子が数人居たはずだ。

 しかし、あまりこのような事を言ってはいけないと思うが、彼女が好みそうな男子はいないような気がするが。

 俗に言うイケメンと呼ばれる人種は居なさそうだ。


「居ない………」


 物理同好会がよく使用している教室をいくつか回ってみたが居ない。

 ついでに物理同好会の人間も居なかった。

 教室を覗いてる時に会った物理同好会の部員曰く、今日は休みなのだと言う。


「何処にいるんだ……」


 それから理科棟中を探し回った。

 だが残念なことに彼女は見つからなかった。居た片鱗すら見つけることができなかった。


「………居ないんだけど」


 理科棟とホームルームがある棟を結ぶ二つあるうちの自転車小屋の近くの渡り廊下でない池に近い渡り廊下の赤本が大量に詰まった本棚の近くの柱に背中を預け、腕を組む。

 何処にも居ない。理科等の教室は全て回ったはずだ。


「………そういえば外の方を見てなかったな…」


 理科棟には下駄箱付近の出入り口とは別にもう一つ外への出口がある。

 そこにはもう使われなくなった旧生徒会室や音楽室のある2階建ての建物があった気する。

 もしかしたらそっちにいるかもしれない。

 今日はいつも音楽室を使っている吹奏楽部は少し遠くにある市民文化ホールで練習と聞いた。

 つまり、彼女は音楽室に行く理由はない。よって、旧生徒会室に居るはずだ。

 

「なんのために……?」


 何故かは分からない。

 だが、もうそこしかありえない。


「行ってみるとするか」


 この高校の果ての果て。最果てにある旧生徒会室。

 そのお陰で図書室付近に作られた新生徒会室に役目を取られ、今では文系の理科の授業で稀に使われる程度しか使われなくなった使用用途のほぼ無い、存在価値の薄い教室。

 県立高校でこのような無駄をして良いものかと思ってしまうが、残っていると言うことは案外別のことに使われているのかもしれない。

 学校中探し回って運動不足の俺の脚はもう歩くのは無理と悲鳴をあげていたが、それを無視して旧生徒会室に向かう。


「ここか………最果てだな」


 旧生徒会室の前でぼそっと呟くとその扉に手をかけた。鍵も掛かっておらず、あまり開閉されることがないからか少し軋む音を立てながら扉が開く。

 中には数組の椅子と机。そして………。彼女も居た。

 机に突っ伏して窓の方を向いていた。


「誰……?」


 窓に向けていた顔を気怠そうにこちらへ向ける。

 そして彼女の大きな瞳を俺に向ける。

 彼女の目は少し潤んでいた。まるで泣いていたかのように。

 少し驚いたような目をしたあと、彼女はか細い声で話し始めた。


「……藤崎くん」


「こんなところでなにやってるんだ」


 少し考えるような素振りをしてから。気怠げに答える。


「………お昼寝?」


「なわけないだろ。もう六時だぞ」


「じゃあ夕寝」


「夕寝すると夜眠れなくなるぞ。というか、そんなことはどうでもいいんだ。結果はどうだったかは聞かないでやる。ほら、図書室に帰るぞ。荷物置きっぱだろ?」


 おそらく聞きそびれたか、聞けなかったのであろう。それゆえの涙だと考えることにした。


「うぅん……わかった〜」


 机から身を起こし、目を猫のように擦って背伸びをすると椅子から立ち上がる。

 それから2人で旧生徒会室から図書室へと向かった。

 あまり人に見つからないように先生達の駐車場の方からぐるっと回って図書室に行く。


「ねぇ……」


「なに?」


「見た?」


「なにを」


「ふふ、見てないならそれでいいの」


「あっそ」


「なんで私があの部屋に居たか聞かないの?」


「聞いてもいいけど。別に聞いても聞かなくてもいいかなって」


「ふーん……。気にならないの?」


「別に」


「そっか」


 風が不意に吹いて桜を舞い散らせる。

 鉄網越しに池が日差しをを反射し、桜を光り輝かせる。その輝きに思わず俺の目を閉じる。

 この景色は……色は。俺には眩しすぎる。

 辺り一面を薄桃色に彩られたこの景色は。俺には合わない。

 合うとすれば彼女だ。

 人生薔薇色ならぬ人生桜色。彼女には薔薇の強烈なピンクよりも桜のような淡い桃色が似合っている気がする。

 そして、俺の人生は無色。その色が1番あってる。



「なんか……」


「ん?」


「いや、なんでもない」


「気になるじゃん」


 先程までの泣いた後のような表情とは打って変わってむすっとする彼女を見ながらなんとも言えない気持ちになる。

 

「なんて言おうとしたか忘れた」


「なにそれ」


 彼女ははにかむと「早く戻ろう」と俺を追い抜かし、走って行ってしまった。


「……なんだかな……」


 彼女と関わって少しずつ……。自分の人生にも色付きかけているかもしれない。


申し訳ない…

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