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恋の色  作者: メダカのユウ
6/9

第6話

「で、何かアドバイスない?」


「……趣味を合わせるとか」


 放課後、谷口さんは図書室にいた俺にアドバイスを聞きに来ていた。

 今、答えるのに時間がかかったのはアドバイスについて全く考えていなかったからではない。

 昨日だって風呂の時間と寝る時間に考えてた。

 何も思いつかなかったが。

 それで苦し紛れに出した答えがこれだ。

 即興で出した割には的を得ていると思う。

 趣味を合わせるのはお互いの話を合わせ、会話し易くする意図もあるし、何よりその話題で話しかけ易くなる筈だ。


「趣味かぁ……。ちなみに君の趣味は?」


「ここがどこだか。そしてなぜ俺がここにいるか少し考えてみてくれ」


 キョトンと首を傾げて俯き、口に手を当てて考え込む。

 すると何かに気づいたように目を輝かせ顔を上げる。


「あぁ……読書ね!」


 「なるほど」とコクンコクンと頷く。ふんと鼻を鳴らして読書に戻る。


「その通り」


 なぜ俺の趣味を聞く。別に構わないが。

 別に他意があるわけでは無いだろう。


「じゃあ好きな人にも聞いてくるね。すぐ戻ってくるから」


「あぁ。そうしてみてくれ。それにしても……」


「呼び方。変えないか?」


 好きな人と毎回言うのは面倒くさい。長いからな。

 そして何より、思春期特有の言いたく無い言葉というやつだ。

 くだらんと思うが俺も花の……いや一応高校生。少しは抵抗がある。


「好きな人の?」


「そう」


「そうだなぁ……じゃあFくんとでも呼ぼうかな」


「了解」

 

 ニコニコしながら図書室から出て行く谷口さんを見送る。

 さて、若干だが心配だ。放課後が彼女にとって1番危険な時間だ。何故か。大量の男子生徒に告白される可能性があるからである。

 流石に好きな人間のところまでついて行くような野暮なことはしないが…。

 だが、行ってる最中に男から告白されたら彼女もたまったものではないだろう。

 それからしばらく待っていたが彼女は帰ってこない。


「……暇だ」


 背もたれに体重を掛け、虚空を見つめる。 

 それから大きなため息をついた後に約束について考える。

 他に一体何があるだろうか。

 遊びに行くとか?いや、相手との親密度が分からない以上そんな無責任なことは言えない。

 

「引き受けるんじゃなかったな……」


「なんか言った?」


「ぅお!?」


 急に後ろから声を掛けられ驚いたので変な声が出た。

 椅子から転げ落ちそうなのを椅子の背もたれを後ろ手で掴んで防ぐ。

 

「どうしたの?悩み事?」

 

 後ろの職員室とカウンターを繋ぐ部屋から佐々木先生がひょこっと顔を出してこちらを伺っていた。


「いや……なんでもないです」


「悩み事があるんだったら先生に話してみてよ」


「なんでもないですって」


「話した方が楽になるよ?」」


「……じゃあ」


 渋々、谷口さんと約束したことを名前を伏せながら説明していく。

 その内容をふむふむと口に手を当てて考えながら聞いていた先生がふと顔を上げ口を開いた。


「うーん…まずは相手のことを知るのが1番いいと思うけど……」


「ですよね。っていうか相手が誰か教えてくれないのおかしいですよね」


「それは〜……私はその女の子の気持ち分かるかな〜」


「……そんなもんですか?」


「そういうもの。女の子は特にね」


「で、いい案無いですか?」


「そうね……そのFくんとどこか遊びに行くとか」


「それ親密度分かんなかったらダメじゃないですか?他人って可能性もあるわけで…」


「そっかぁ……じゃあまずそこをその子から聞きださないとね」


「それが良さそうです。相談乗ってくれてありがとうございます。先生」


「どういたしまして。また進展あったら教えてよ」


「了解です」


 とりあえずの方針は決まった。まず、親密度を聞く。それに対して程度のいいアドバイスをする。

 これで今のところはなんとかなりそうだ。

 人の意見を交えた案の方が自分の考えた案より良くなるというのはどうやら本当らしい。


「……遅い」


 先生と話をしてそれからしばらく待っているのに全然帰ってくる気配がない。

 すぐに帰ってくると言っていた筈なのだが。

 もしかしたら何かあったかもしれない。

 そう考えると焦燥感を抑えきれなくなる。

 彼女を信じて待つか、探しに行くか。

 探しに行く場合。探し出せるかもしれないが、もし、彼女が何事もなく帰れていたら待たせてしまう。

 反対に、待つ場合。帰ってこない可能性は低いので待っているのが適切かもしれないが何かあった場合俺は何も手出しはできない。


「(どうするかな……)」


「……ええい。時間の無駄だ。探しに行った方がいい」


 カウンターの上に置いてあるペンとメモ用紙を手に取り、「六時までには戻る。待っててください」と走り書きする。

 それからカウンターの机の上に貼り付け、谷口さんを探すべく席を立った。

 

「……どこに居るんだ」


 早速詰まった。まずどこに居るか分からない。

 焦っていたからか珍しく考えなしに行動してし待った。

 だが、全く考えずに行動した訳ではない。

 情報収集して少しずつ探していけば辿り着ける筈だ。

 それから早速近くにいた同学年の男子生徒に声を掛けた。


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