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恋の色  作者: メダカのユウ
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第2話

 書き置きが少しあるのでお願いします。

 高校生活ってのは大人たちから人生の春だとか人生で一番光り輝いている時期だとか言われて色々持て囃される。

 実際そうだ。輝く人間は将来輝くかもしれないが、高校生は何をしても輝く。と俺も同じように思う。

 だが、光り輝かなくたっていい。別に目立つことなんてしなくてもいい。そんな高校生が居たっておかしくないじゃないか。どうして高校生というだけで光り輝かなければならないんだ。そう考えるのが俺、藤崎 夏葵である。

 桜の咲き乱れる校門までのカーブを描き螺旋状になった坂を歩きながらふと思う。


「よう。今日も目つきが悪いですな〜少年!」


「うっさい。この目は生まれつきで俺がなりたくてなった訳じゃない」


 後ろから急に肩をバンと叩いてきたのは幼少期からの幼馴染かつ親友……親友?まぁ…親友の鈴木 灯真。顔だけ見れば十分イケメンだがバカなのが玉に瑕の残念系イケメンである。

 悪いやつではない。今のも仲がいい故の軽口だ。だが、その軽口も別に心を刺さるような鋭いものはない。

 そのまま一緒に登校する。

 桜吹雪の吹く学校の校門前を通り、下駄箱のところまで行く。

 ローファーを脱ぎ、小豆色に近い赤の上履きに履き替える。

 いつもなら7時35分から朝補習があるのだがまだ新学年が始まったばかりなのでまだ8時25分登校となっている。朝補習が始まるのは全員の面談が終わってからだ。

 3階にある自分の教室まで上がる。この階段が意外とキツかったりする。

 毎朝毎朝登っているが筋力が付くわけでもなく、ただただ体力を消耗しているだけのような気がする。

 実際そうだと思う。

 ようやく3階まで辿り着き、自分の教室に入る。

 自分の席にカバンを雑に置き、椅子に座って机に突っ伏した。

 

「ふぅ……毎回思うんだが…はぁ…やっぱり……上の学年が下の階に教室があるべきだと思うんだが……」


「これだから帰宅部は……」


「スポーツクラブに入ってる帰宅部員に謝ってこい」


 ゼエゼエと荒く呼吸する俺を運動部所属の灯真は前の席でケタケタと笑いながら椅子にふんぞりかえって座る。


「ちゃんと座れ、先生もすぐ来るぞ」


「へいへいっと、来たな」


 ウチのクラスの担任が入ってきた。

 加藤 修、40初めの男性教員だ。見た目は強面である。野球部顧問であり、ゴツい体躯をしているため生徒から怖いと評判になっている。

 だが、これはただの先生のことを何も知らない人間が勝手に作ったステレオタイプであり、性格は優しい。というか、怒るとかいう無駄にエネルギーを消費する行動をしないだけだろう。

 この先生のポリシーにはまったくもって共感しかない。

 それから朝のショートホームルームが終わり、1時間目の準備のための休み時間に入る。


「次の時間は?」


「理科」


「おっけ」


 1日が始まった。普通の月曜日の時間割を着々と消化していく。

 そして昼になった。毎日来ている一部の生徒がこれを目当てに学校に来ていると言っても過言ではない昼休みになった。


「さて、行くか」


「いってら〜」


 俺は図書委員会なので昼休みは図書室で昼飯を食べなければならない。

 というのも実は毎日行く必要なんてないのだ。順繰りでカウンターの当番は図書委員全員に回ってくるのだが、俺はカウンターに座って本を読むのが趣味なので(灯真に辺な趣味と言われるが俺は変とは思っていない)貸し出しの当番のためではなくあくまで趣味のために本の貸し借り行っている様なものだ。

 そのため事前に図書委員会の集まりがあった時にその旨は委員達に言ってある。だから、大抵の図書委員会の人間は俺の昼休みの貸し出しを任せている。側から見ればただのイジメだが、自らやっているので全く気にならない。

 その図書委員会も大抵は他の委員会にあぶれたり、楽そうだから等の理由で入った人間ばかりだ。

 そのため非常に楽な委員会に入りたい陽キャとあぶれてしまった陰キャの差が激しい。


「ふぅ……」


 弁当の中身を全て平らげてカウンターの席の深く座り、教室から持ってきた単行本を開く。

 これがいつものルーチンワークだ。これをやらないと落ち着かない。下手したら教室並みに落ち着くかもしれない。

 それから暫く読書に耽っているとカウンターの前に返却目的の生徒が来た。


「これ返します」


「はい、返却ですか…あ」


 知らない人間かと思えば違った。目の前にいたのは谷口結菜だった。

 彼女は成績優秀、眉目秀麗の完璧超人として学校内で知らない人間の方が少ないぐらいの有名人だ。

 肩にかかるぐらいまでの黒に近い栗色の艶やかな髪。大きな瞳と長いまつ毛、ふっくらとした唇に銀鈴の鳴る様な心地よい声。

 その全てが整っていてまるで美術品かの様な美しさがあった。

 いつもより少し早い来館に少し訝ったが軽くかぶりを振って雑念を払うとささっと返却を済ませた。

 彼女はここの図書館の常連で週に2、3回は来る。


「こちらで預かります」


 それから彼女は本棚を眺めながら図書室の奥に行ってしまった。

 彼女は大層人気者で取り巻きがいない事なんてなかなか無いのだが、図書室に来るときだけはいつも一人で来た。

 暫くまた本を読んでいると借りる本が決まった様で一冊の本がカウンターの上に載っていた。


「借ります」


「はい」


 本来なら学年、クラス、出席番号を言ってもらわねば貸し出しは不可能なのだが、もう何度も図書室に来てもらっているので彼女の学年もクラスも出席番号も覚えている。


「どうぞ」


 彼女が借りた本を渡す。

 いつもだったらここで会話は終了。このまま彼女は図書室から退出する……はずだった。

 何故か彼女はカウンターの前から離れない。

 何事かと彼女の顔を見ると、何かを言いたげな表情で俺の顔を見つめていた。


「………何か御用でしょうか?」


「いえ!あの……」


 何かを言い淀んでそのまま黙り込んでしまった。

 一体何がしたいのかが分からない。本も貸し出した。もう用はないはずなのだが。

 黙ったままカウンターに立ち続けるのでもう一度何をしたいのか聞こうとすると彼女はその口を開いた。


「聞きたいことがあるのですが……」


「…なんでしょうか」


 新しい本の場所か、はたまた本の予約か。 だが、たったそれだけのことでここまで言葉に詰まることはないだろう。

 彼女は陽キャと言われるグループに属しており決してコミュ障ではないのは確かだ。


「急にこんなことを聞くのは申し訳ないのですが…毎日放課後、図書室で本を読んでいらっしゃる方は居られますでしょうか……?」


 その言葉を聞いた瞬間身体に電撃が走った。まさか。多分そのまさかだ。彼女が、彼女こそが放課後に図書室の下で告白され続けていた張本人だ。

 今までのことは他の人間に見られて露呈することはなかった。

 噂に聞いていてもせいぜい「谷口はどんな男でも振る」と小耳に挟む程度だった。


「…………その人に何か用ですか……?」


「そのお方に一度お会いしたいのですが……今日はいらっしゃいませんかね…?」


 しゅんとなって俯いてしまう。

 別に傷つけたい訳じゃない。だが、ここで正体をバラしてしまい、何か起きたら面倒だと思ったのだ。


「……その人とと何かあったのですか?」


「それは…その……」


「名前は?」


「……分からないんです…」


 普通だったら「話にならない」と突っぱねてもいいのだ。しかし、それは普通だったらの話であり、今は特殊すぎる。だってその毎日図書室にいる人間とやらは俺自身なのだから。


「………すみません。ではまた出直してきます」


 そう言って彼女はそそくさと図書室を後にしようとした。

 違う。本当は何かが起きるのがめんどくさいんじゃない。

 ただ、彼女に「大きなお世話だった。もう関わらないでくれ」と言われるのが怖かっただけなのだ。


「待ってください!」


 勝手に口から言葉が滑り出ていた。

 驚いた顔でこちらに髪を靡かせ振り向く谷口。

 もう後戻りはできない。でも、何故か後悔はしていなかった。


「その図書室に毎日いる人は……俺です…」



 最近valorantにハマってて描く暇ががが……

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