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恋の色  作者: メダカのユウ
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第1話

 初の恋愛モノです!別の小説が行き詰まっちゃったので息抜きに書いてます。

「俺と付き合ってください!」


「ごめんなさい、あなたとは付き合えません」


 聴き慣れたやりとりだ。一年間聴き続けている。

 残念なことに告白しているのも断っているのも俺ではない。というかそもそも俺は恋愛なんて別にしなくてもいいと思ってる。『そんな生き方つまらない』『花の高校生がそんなことじゃダメだ』なんて意見があるのはわかる。でも、別に全員が全員そうじゃなくていいはずだ。

 夕陽が差し込む無人の図書室のカウンターでふと思う。

 ちなみに、今聞こえてるこの会話はニ階にある図書室の窓から、つまり外から聞こえてくる会話だ。

 その場所は人の目にはなかなかつかない。だからこそ告白の場所によくチョイスされるのだろう。


「でも!諦め切れないんです……!」


「っ!……離してください」


 恐らく、男子の方が女子の手なりなんなりを掴んだか触ったかしたのだろう。若干恐怖を孕んだ言葉が少女の口から漏れ出た。

 これで今月八回目。四月になってまだ半分も経っていないのにこの回数だ。

 最近は告白なんてLINEでしたりするもんだと思っていたがそんなこともなかったのか。それともLINEも知らない人間に告白しているのか。後者について、連絡先も知らない異性に告白するのは少し早急な気もするが。

 ただの推測だが、おそらくこの少女は今回に関しては知らない人間から告白されているのだろう。だからこんな風に直接告白される。知り合いならばLINEやらで交際を申し込むなりしていることだろう。

 まあ、ちとばかり偏見があったかもしれない。今現代でもその古臭い告白方法を計画し、行動している人間も恐らく一定数は居るだろう。


「お願いです……付き合ってください……!」


「先ほども申し上げた通りお断りさせていただきます」


 ………ここまでか。少女の声が涙声になっている。全く、最近の男はガツガツしすぎな気がする。いや、俺が恋愛等々に疎いだけか。それとも俺の考えが古いのか。そんなことを思う俺も最近の男であるのは違いはないのだが。

 一年間も顔の全く知らない少女への告白……いや強迫?を止め続けているわけだが、なんだかもう少女の方に同情の念さえ芽生えている。

 実は自分勝手な善意の押し売りのようで毎回気が引けてしまっている。余計なお節介かもしれないと何度思ったことか。だが、無理やり付き合わされそうになっている少女を見て俺は何もしないという選択肢は選べない。

 本の貸し出しをするカウンターにある回転するイスに座りながらくるっと後ろにある窓の方を向く。

 窓枠に腕を乗せて息を吸う。滅多に出さない大きな声を出す為に。


「そこの男子、女子が怖がってるのがわかんないか」


「……!誰だ!」


 驚いて声の方向へと反応する男子。

 残念なことにそちら側からでは俺の顔を見ることもどこから言ってるかもわかるまい。

 おかげさまで逆恨みされて告白を断った男に絡まれた事は一度もない。


「通りすがりの生徒だ」


 自分でもあんまりな回答だと思ったが、このようなリスクのある事をして身バレをするわけにはいかないので仕方がない。


「それよりも、聞こえなかったのか。女子が嫌がってないかよく見て見ろ。嫌がっていないか?」


「………」


「そこの女子もどうなんだ。嫌じゃないなら別にいいが、嫌なんじゃないのか?」


 もう答えはわかってる。何十回も答えは聞いている。しかし……勝手にこっち知り合いだと思っているだけなのだがなんだか「女子」という呼び方は他人行儀な気がして少しむず痒い。


「少し怖いです……」


「だろうな。さて、どうするそこの男子。俺から一つアドバイスをさせてもらうと、諦めた方が身のためだと思うぞ」


 だってそうだろう……多分。この女子が先生や他人にこのことを口外した場合『女子に無理やり迫った』なんて不名誉な称号を得ることになる。それは誰であろうと避けたいはずだ。


「……わかった。ごめん」


 そう言い残してその男子は彼女の手を離し、去って行った。


「あの……ありがとうございます…いつも」


 窓枠から顔を出さずに「気にするな」の意を込めてひらひらと窓の外で手を振るとまたカウンターに向き合って読みかけの文庫本を開いた。

 顔も学年も知らない少女。毎回色んな男に告白されて居るからたいそう顔立ちが良いのだろう。

 まあ俺には興味のカケラもないので関係のない事だ。




 次回もよろしくお願いします。

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