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短編とかその他

当たり前の便利さ

作者: 透坂雨音



 ずっと昔は、隣の町までいくのにもすっごく時間がかかったんだろうな。


 町の展望台に上った時、たまにそう思うんだ。


 きっと昔の人にとって、世界はうんと広かったに違いない。


 なんでこんな事考えてるかって?


 今、電車に乗ってるから。


 とまってる、やつにね。


 何気なく使っている電車が遅れて、みんながイライラしてる。


 三分。五分。


「会社に送れる」とか「今日は試験があるのに」とか、皆暗い顔でぶつぶつ。


 こっちは大事な用事なんてないのに、どうしてだか私まで暗い気持ちになってしまう。


 文明の発達とか、科学技術の向上とかで、皆すごく豊かになったと思うよ。


 でも、その反面。


 すごく大事な事を忘れちゃってる気がするな。


 たとえば、そう……感謝とか?


 電車が遅れるのはもちろん駄目な事だと思うよ。


 運転手さんとか駅員さんとか誰かがミスしたのなら、しっかりしてって思うし、誰かが小石をなげたり障害物を置いたりして、そういういたずらするのもいけないと思う。


 けど、「間に合ってあたり前」って思っていない?


 私は、皆がたくさん苦労して「不便が当たり前」であるはずなのを「便利で当たり前」に変え続けてくれているんだと思ってる。


 水も、電気も。

 ひょっとしたらガスとかも。


 昔よりずっと便利で、思った所にすぐいけるのに、便利なのが、出来るのが普通って思うのはなんだかとても失礼だと思う。


 なんて考えてたら。


 運転手さんの声。


 放送だ。


 車内にほっとした雰囲気。


 ゆら、と動き出す車体。


 あ。


 もう解決したんだ。


 ガタゴト。音を立てて早くなっていく電車の中で、私は周りの人達の顔を見る。


 大変な人じゃなくていい、余裕がある人でいいから、「大変だったね」、「ありがとう」って思っててほしいな。



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