第一章『未知との遭遇?』 ⑥
放課後――
授業を終えた圭介は一人帰宅の途についていた。
「なんか……今日は疲れたな」
胸に去来する虚無感――それは計り知れないモノだった。
裕福な家庭に生まれ、何不自由なく育ってきたものの、彼は幼い頃から抱く劣等感に頭を悩ませていた。学力と運動は人並み以下、容姿もイケメンとは言い難く、何をやってもうまくいかない。更に、気弱で内向的な性格が災いし、不良少年達の餌食にされる――そんな自分に嫌気がさしていた。
「ハァ……」
気だるいため息を吐き出す圭介は、寄り道する事なく真っ直ぐ自宅へと辿り着いた。
外観からして一般の住居と一線を画した彼の自宅は、まるでリゾートホテルの様な雰囲気を醸し出す四階建ての高級住宅だ。
門を開けると、綺麗に手入れが行き届いた美しいグリーンの芝生が視界に広がる。五十メートル程歩き玄関に辿り着くと、扉の脇に備えられた静脈認証パネルに右手をかざした。カチッと言う機械音と共に玄関の自動ドアが開く。
「ただいま~って、誰も居ないけど……」
床に黒曜石がふんだんに敷き詰められた、吹き抜け構造のエントランスに圭介の声が寂しく響き渡る。エントランス中央の螺旋階段を上り、二階へ移動した彼は階段に一番近い部屋へ入った。
「ふ~。さてと……」
ここは圭介の自室。二十畳程ある広い室内に、バランスよく家具が配置されシックにコーディネートされている。
圭介は片隅に置かれたベッドの上へ無造作にリュックを放り投げ、傍らへ寝そべった。
「特にやる事もないし、また暇つぶしでもするかな……」
ポケットからおもむろに取り出したスマホの画面上にあるショートカットのアイコンにタッチしてアプリを起動する。画面上に『ファイナルファイターズ』というタイトルが映し出された。
「ん? 早速対戦の申し込みか。全く、暇人が多いよな~。俺も含めてだけど……」
スタートボタンをタッチし、対戦を受け入れると、ニ体のキャラクターが現れた。
圭介が使用するキャラクターは、背中に白い羽根が生えた天使の様な女性キャラクター。迎える対戦相手は、全身に分厚い装甲を装着した、まるで戦車の様な厳つい男性キャラクターだ。
「ログインネームはっと……」
【喧嘩上等】
「またコイツかよ……。懲りないなぁ」
呆れた口調の圭介がエンターをタッチすると、画面上にライフゲージと必殺技ゲージが表示された。画面下には両者のランキングが表示されているのだが、そこには驚くべき『数字』が浮かび上がっていた。
【喧嘩上等】ランキング58656人中/57888位
【夢想天女】ランキング58656人中/1位
ログインネーム夢想天女。そのプレイヤーである圭介は、ファイナルファイターズのランキング1位『キング・オブ・ファイター』の称号を持っていた。
<続く>
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