第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ㉓
「そ、そんな……頑張ったのは真白だよ。俺は大したことしてないよ」
「けーすけ!」
「え……うおっ!」
振り返ったその瞬間、圭介に抱きつく真白。その背中に両翼は無く、口調も普段の真白に戻っていた。
「けーすけけーすけけーすけぇ!」
「真白……お前元に……うっ!(や……やわらか……)」
圭介の胸にぐにゅりと押し付けられる二つの柔らかな膨らみ――その感触が強張っていた圭介の身体を一気に緩めた。
「けーすけがマスターになってくれて、真白は本当に嬉しいよ!」
「お、おぉ。ちょ…………わかったからあんまりグリグリ動いちゃ……」
「真白、現在圭介はただでさえ興奮状態なのだ。それ以上の刺激を与えると、急激な血液が海綿体に集中し……」
「おい! こんな状況で下ネタはやめろ!」
圭介は嘆息しながら真白を振りほどく。するとそこへ――
「おー。咲姉達も圧勝だったみたいだね。こっちもやっと終わったよ~」
「咲夜さん、鉄人形さん達は一体残らず全て殲滅いたしましたわ」
咲夜の元に後方で簡易型兵士との戦いを終えた様子の姫と花蓮が合流した。
「姫、花蓮、ご苦労だったな。お前達のおかげでワンメイクに集中する事が出来た。感謝しているぞ」
「お安い御用だよ。でもさ、あれだけの数を相手にすると流石に飽きてくるんだよね~」
「姫さん、終盤は半分寝てましたでしょう? 戦闘中に気を抜くと足元をすくわれますわよ」
「だってさぁ、単調な作業は眠気を誘うんだも~ん。途中からアイツらが羊に見えてきたし」
数百体に及んだ簡易型兵士を相手にしてきたとは思えない楽観的な会話を繰り広げる姫と花蓮。無事に全員揃った圭介は、ようやく安堵の表情を浮かべた。
「あ……咲夜、所でアイツどうするんだ?」
「うむ。花蓮、戦闘の疲労が残っている状態ですまないが、少し力を貸してもらえるか?」
「はい。なんなりと」
すると咲夜は花蓮を引き連れて横たわる桐谷の元へ移動した。
「……しょ……勝利の賛美は終わりましたか……。ならば……早く核化させて下さい」
懇願する桐谷を見つめる咲夜。
「花蓮、コイツにヒーリングを施してくれ。傷を塞ぐ程度でいい」
「承知いたしました」
花蓮は桐谷の身体に両手を近づけ、ヒーリングを始めた。
「…………な」
「え!?」
意外な行動に驚く桐谷、そして圭介。花蓮の手のひらから発するぼんやりとした柔らかなオレンジ色の光が、桐谷の傷を修復していく――
「もういいだろう」
数分間のヒーリングにより、傷口が塞がった桐谷。赤いC粒子の噴出も止まり、青ざめていた顔には赤みが戻った。
「う……」
身体を起こし片膝をつく桐谷は、咲夜を見上げる。
「一体どういうおつもりですか……」
「フン……。今この場で貴様をロストさせ、部隊を殲滅した所でアーミーが起こしたクーデターは止まらない。このアナザーポイントを貴様等の墓場にするよりは、貴様を逃がして我々の情報を別動部隊等に流させた方がメリットだと判断したまでだ」
「……自らアーミーの賞金首になるおつもりですか……」
「このブレーンにおける我々インフィニットの任務……それは第一級保護惑星、地球を害敵から守る事だ。それが例えアーミーであろうとも、害を及ぼすのであれば全て排除する。他のアーミー達にそう通告しておくんだな」
「……そうですか。これは我々アーミーに対する宣戦布告と受け止めてよろしいのですね?」
「その通りだ。理解したのならば、あの『二人』を連れてさっさとこのポイントから失せろ」
「フフフ……承知しましたよ」
不敵な笑みを浮かべながら、核化した京香と沢村の核を回収する桐谷。
「柊さん」
「何だ?」
「今回は我々の完敗です。しかし、貴女は私をロストさせなかった事を後悔する時が来る……必ずね」
「それは楽しみだ。我々インフィニットは逃げも隠れもしない。いつでもかかってこい」
「フフ……では、またいずれお会い出来る事を願っています。いや……それは叶わぬ願いかも知れませんがね。しかし、もしもお会い出来た暁には私からワンメイクを挑ませていただきますよ」
そして桐谷はアナザーポイントから姿を消した。
「さ……咲夜、いいのかよ逃がしちゃっても……」
「問題ない。アーミー達の目が我々に向けば、他の保安官達が核化させられる被害も減る。とにもかくにも、奴らが企てたクーデターを止めない限り、地球を含めた他ブレーンの安全は守れないからな」
「そっか……」
「さて、皆本当にご苦労だった。早く家に帰って花蓮の料理に舌鼓を打とうじゃないか」
「おー! 花蓮ちゃん、期待してるよー」
「はい、腕によりをかけて作りますわ」
「ごっはん! ごっはんん! けーすけ帰ろー♪」
「お、おぉ……」
アーミーとの激闘を制した圭介達は、アナザーポイントを出て家路へと向かった――
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