第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ⑳
左脇腹から溢れ出す赤いC粒子。そして未だかつて体感した事の無い激痛が桐谷を襲う。
「グフッ! ゴホッゴホッ!」
口から赤いC粒子を吐き出し、地面に両膝をつく桐谷。同時に制御不能となったジェノサイドも地面へ落下した。
「ゴホッ! 何が……起きた……」
周囲を見渡す桐谷。しかし、空中に攻撃可能なポッドは浮かんでいない。戸惑う様子の桐谷を見て、咲夜は左手の人差し指でメガネをクイッと上げた。
「圭介に向けて攻撃を行えば、必ず私が防御すると判断した貴様は、敢えて照射時間の長い対戦艦用のプラズマレーザーを使用した。そしてレイ・フォースを引きつけている間に私を攻撃する……苦し紛れに描いたシナリオの割には上出来だ」
「卑怯……とでもいいたいのですか……ゴホッ!」
「貴様の行動は想定の範囲内だ。例え伝統あるワンメイクだとしても、そこにルールなど存在しない。どんな手段を用いても結果的に勝つ事……それがアーミーだからな」
「その通り……戦場においてプライドなど不要。どれだけ惨めな状況でも、勝利を手にする……常勝を掲げているアーミーに敗北は許されない!」
桐谷は痛む脇腹を押さえながら、アスファルトに墜落した6機のジェノサイドを起動させ、頭上に配置させた。だが――
「グハッ!」
桐谷の右肩を貫通するプラズマレーザー。余りの激痛に桐谷は顔を歪める。
な、なんだこの攻撃は……何故ジェノサイドのオートディフェンスは反応しない!?
予測不能な攻撃を受け、激しく動揺する桐谷は再び周囲を確認する。
従者を守るポッドに動きは無い……ではこのプラズマレーザーは一体どこから……。
狼狽える桐谷。咲夜はクールな表情で言葉を紡ぎ出す。
「攻撃型サイキッカーとして、6機の軍事用ポッドを自在に操作出来る貴様は、優れたAランクサイキッカーだ。しかし、サイキッカーには更なる『上』があるという事を貴様に教えてやろう」
咲夜がそう告げた後、上空の何も無い『空間』から突如プラズマレーザーが撃ち出され、6機の内2機のジェノサイドを撃墜させた。
「な……」
「空間に存在する物質を解析し、演算を行う」
矢継ぎ早に撃ち出されるプラズマレーザーは、更に二機のジェノサイドを撃墜させた。
「そしてその物質情報を操作する事により、様々な『攻撃』が可能となる」
唖然とする桐谷は目の前で起きた出来事に対して一つの『可能性』が頭の中に浮かんだ――
「ま、まさか……。ポッド無しでプラズマを生成出来るというのか…………」
「私にとってポッドは護身用に過ぎない。兵器に頼る事なく、環境を利用して戦う……それがSランクサイキッカーだ」
咲夜が言葉を紡ぎ終えたその時、桐谷の表情は痛々しさを超え、驚愕へと変わった。
「先程ポイントの入り口から放ったプラズマレーザーも自ら生成したモノだったのか……」
「下位区画のカラーズ人はアーミーに適う訳が無い……その安直な思い込みこそが、貴様の欠点だ」
そんな馬鹿な……。この保安官のレベルは『天クラス』だと言うのか!?
「では八方塞がりの貴様に再び選択肢を与えよう。降伏を申し出るならばこれ以上痛い目を見る事も無い。しかし、それでもまだ戦うというのならば、核化するまで容赦はしない」
「……貴女に一つ質問がある」
「何だ?」
「ワンメイク開始からその超高度な能力を併用していれば、間違いなく戦況は貴女に有利だったはず……。何故使用を控えたのですか?」
「真白にロストさせられた剣使い同様、貴様を瞬殺する事は容易い……だが、私は完璧主義者でな。完全なる敗北を与える事こそが私のポリシーなのだよ」
「フフ……何ともサディスティックな方だ。確かに、こんな屈辱を味わうのは初めてです。そして貴女と私の圧倒的とも言える戦力差も認めます。ですが……私にはまだ二機のジェノサイドが残っている……。アーミーである以上、ここで戦いを放棄し、敗北を認めてしまったのならば、私はアーミーではない!」
もはや勝ち目など無いと悟っていた桐谷。しかし、右肩と脇腹から赤い粒子を吹き出しながらも立ち上がり、二機のジェノサイドを前方へ配置した。
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