第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ⑫
ついに相対したナインのアーミーとセブンの保安部隊インフィニット。アナザーポイントで繰り広げられるカラーズ人同士の戦いは、大きな局面を迎えようとしていた。
「マナの少ない環境下においてこの戦闘……。敵ながら見事な戦術だ」
「同感です。あの銃使いと弓矢使いのコンビは一個小隊の戦力に相当しますね」
藍沢京香を核化、戦闘不能に追いやられ、数百体の簡易型兵士をも失いかけている俄然劣勢のアーミー、沢村と桐谷。しかしそれでもなお、二人の表情に緊迫感は表れていなかった。
「あのオモチャ達が朽ち果てるのも時間の問題だな」
「すみません沢村隊長。高価な買い物でしたが、これほどまでに役に立たないモノだとは」
「構わんさ。あの二人の戦闘能力は次元が違う……即席の付け焼き刃如きが適う相手ではない。さて、我々もそろそろ戦闘開始といこうか」
冷静沈着な沢村と桐谷は、刃の様に鋭さを帯びた視線を圭介達に向けた。
「圭介、心の準備は出来ているか?」
「あ、あぁ……」
「よし、これより我々は中央突破した後、アーミーとの戦闘を開始する。圭介と真白はあの剣使いを、私はサイキッカーを仕留める」
「了解」
「え……それって、大丈夫なのか? こんな何百体の人形を差し向けてくる奴らが、1対1の戦いを受けるとは思えないけど……」
「大丈夫だ。あの桐谷という奴は、勝つ為には手段は選ばないタイプだが、沢村という奴は違う。私の見た所、正統派なアーミーだ。奴ならば『ワンメイク』を受け入れるはずだ」
「……? 何だよ、ワンメイクって?」
「『剣には剣を』『銃には銃を』『ポッドにはポッドを』1対1の同属決闘、それがワンメイクバトルだ。アーミーには古くから『しきたり』があってな。相手からワンメイクを挑まれたら、それを受ける事がアーミーとしての誇りなんだ。よし、では行くぞ」
「ちょ、咲夜……」
威風堂々ともいえる毅然とした面もちで歩き出す咲夜。しかし、不安感が拭い去れない圭介は足を前へ踏み出す事に躊躇する。その時、圭介の右手を柔らかな感触が包み込んだ。
「マスター。ううん、けーすけ」
「真白……」
機械的な話し方と無表情が解けた『いつも』の見慣れた真白。そのふんわりとした表情を目にした圭介の緊張は一気に和らいだ。そして――
「おなか空いた」
「……へ?」
「はやく家に帰ってご飯食べたいよ」
「……え? ご、ご飯……!? ハハハ……アハハハハハハ!」
強張った表情が緩み、笑顔が浮かぶ圭介。「ハァ~、お前こんな状況でよくそんな事考えられるよな」
「だってお腹ペコペコなんだもん」
圭介を取り巻く戦々恐々とした殺伐な空気を一瞬で吹き飛ばしたのは、真白との何気ない日常会話だった。それは一つ屋根の下で暮らす異世界宇宙人を『家族』として認識しているからこその心地良い会話。
そして圭介も――
「そうだな……うん、早く帰って皆で花蓮の旨い飯食おうぜ」
先程まで強張っていた体が嘘の様に軽い――そして圭介は真白と共に前へ歩き出した。
「花蓮ちゃぁ~ん」
「はい、なんでしょう?」
「今日の夕ご飯何?」
「本日のメニューは、コース料理です。前菜はサーモンのカルパッチョ、メインは白身魚の香草焼きとゴルゴンゾーラとキノコのリゾット、デザートにクリームブリュレですわよ」
「マジで!? 超やる気出てきたよ! っしゃー! オラオラオラ――――!」
「ほぉ、今日はイタリア料理か。実に楽しみだな」
真白同様、激しい戦闘の最中に交わされる日常会話。それを耳にした圭介は心の中で感慨深く呟いた――
皆で一緒に家へ帰ろう……。
「圭介、私についてこい」
「わかった」
細身のスーツ姿が良く似合う咲夜の後ろ姿。背の高い咲夜は、まるでモデルの様に颯爽と歩く。そこへ数体の簡易型兵士が咲夜の行く手を阻もうと、襲いかかってきた。
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