第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ⑦
「その通りだ」
「アハ……アハハハ……アハハハハハハハハハ!」
これまでインテリな雰囲気を崩さなかった桐谷が腹を抱えて笑い出した。
「なんと愉快な! 我々アーミーと一戦交えようと言うのに、そんなゴミクズを使用すると!? これはもはや喜劇だ」
「てゆーかさぁ、コイツらもうヤっちゃおうよ~。アタシらの事ナメすぎだしぃ」
「確かに。我々をナインのアーミーと認識した上での愚行ならば、これはもはや侮辱に等しい……」
真田は右手首のバングルを胸元に翳した。バングルから粒子が溢れ出し、真白のレーヴァテインよりも巨大な剣を形成した。
真田はその切っ先を真白に向け、
「兵器を持たない保安官など、第一区の一般区民同様……我が一人で凪払ってくれよう」
咲夜は俯いて、フッ……と笑みを浮かべた。そして顔を上げると、真田のその言葉を一蹴するかの様に高笑いを上げた。
「ハハハハハハハハハ!」
「何がおかしい? 核化を免れぬ状況に気でもふれたか?」
「……カラーズしかり、他ブレーンしかり。全ての世界には常識という固定概念が存在する。ソレを覆す出来事にはつくづく驚嘆させられ、知的探究心をくすぐられるものだよ。貴様等アーミーが起こしたクーデターは永きに渡るカラーズの歴史上類を見ない大事件だ。しかしそれ以上に、この羽鳥圭介という地球人が得た能力は、ブレーンの壁をも超えた常軌を逸するモノなのだよ……」
「単なるリアルアートごときで随分と大袈裟な表現だな。確かに地球人でありながらカラーズ人の能力が宿る事は稀な事例だ。だがしかし、戦闘時において使い物にならぬ能力など、無能に等しいわ」
「百聞は一見に如かず……。真白、レーヴァテインを装備しろ」
「うん……。これはけーすけが真白の為に描いてくれた夢。けーすけの夢は誰にも壊させない……。けーすけの夢は、真白が守る!」
真白はレーヴァテインを力強く握りしめた。その瞬間、レーヴァテインの柄部分から無数のコードが飛び出し、真白の右手首に巻きついた。
「はぁ!? 何であのゴミ反応してんのよ!?」
京香は驚嘆の声を上げた。
コードは手首から前腕にかけて巻きつくと、真白の右腕と同化した。
「ええ!? 咲夜、何だよアレ!」
京香と同様に、圭介も驚嘆の声を上げた。
「レーヴァテイン。お前が描いた真白専用の兵器だ」
「そんな事はわかってるよ! じゃなくて、あの剣はオブジェみたいなモノじゃなかったのか!?」
「勿論そうだ。アレは正真正銘リアルアートで創られた具現化オブジェに間違いは無い」
「……じゃあなんであの剣は反応を……」
「お前の能力は単なるリアルアートではないのだよ。お前に宿った真の能力……それはアルケミスアートだ」
咲夜と圭介の会話に聞き耳を立てていた桐谷の目つきが鋭くなった。
「アルケミス……アートだと!? まさか……」
「リアルアートは描いた絵を具現化させるだけの能力。それに対し、アルケミスアートは具現化した絵が実際に機能する能力だ」
咲夜は微かな笑みを浮かべた。「つまり、お前が描いてくれたこの兵器は実際に使用出来るのさ。さしずめアート兵器と言った所だな」
「マジかよ……俺の能力がそんな凄いモノだったなんて…………あれ? でもさ、実際に兵器として使用出来るなら何でアーミーはあの剣を装備しなかったんだ?」
「装備しなかったのではない。装備出来なかったのさ。レーヴァテインが真白以外の第三者には装備出来ない理由……。それは圭介、お前が絵を描く際にリミッターをかけたからだ」
「え? 俺は別に何も……」
「お前に絵を依頼した時、兵器の使用者を思い浮かべて描いてくれと言った事を覚えているか?」
「あ、あぁ。覚えてるよ」
「おそらく、お前のアルケミスアートは、特定の人物を想う気持ちがリミッターの役割を果たしているのだろう。以前リンゴの絵を具現化させた時、真白はあのリンゴを旨いと言って食べたろ?」
「確かに……俺が食べた時はとても食えたモノじゃなかった」
圭介はアトリエでの出来事を思い出した。確かにあの時、真白は旨そうにリンゴをむしゃむしゃと食べていた。
「私もそうだ。あのリンゴはまるで砂を噛み締めたような味だった。だが、真白だけはリンゴの瑞々しさを味わう事が出来た……。その時、お前の能力は単なるリアルアートではないと確信したのさ」
「そうか……だから俺に兵器を描く事を頼んだのか……」
「圭介、心から礼を言う。これで我々はあの反逆者共を駆逐する力を得る事が出来た」
咲夜はそう圭介に告げると、盾型のポッドを頭上へ舞い上げた。
ポッドは音もなく空中に浮かんだ。
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