第一章『未知との遭遇?』 ④
「じゃあね圭ちゃん。本当に大丈夫?」
「あぁ……部活頑張れよ」
校舎の玄関で木葉と別れた後、スリッパに履き替えた圭介の足取りは重かった。
「ハァ……よりによって木葉に見られるなんて、最悪の日だ……」
ため息を吐き出しながら階段を上る圭介の脳裏に、中学時代の『出来事』がフラッシュバックする。
中学時代、圭介は不良少年達に『融資』と言う名の恐喝を受け続けていた。
その理由は圭介の『家柄』にある。
彼の両親は全国展開するファッションブランド店のオーナーで、家族は都内の一等地にある豪邸に住み、経済的にも非常に裕福だった。故に圭介が貰う小遣いもまた人並み外れていたのだ。
その噂を嗅ぎつけた不良少年達は、彼に借金を要求し始めた。
最初は『貸すだけなら』という軽い気持ちで借金に応じていたのだが、小さな火種はやがて瞬く間に燃え広がるもの、その後は次から次へと借金を申し込む不良少年達が増えていった。そしていつしか『羽鳥銀行』と呼ばれる様になり、歩くキャッシュディスペンサーと化してしまったのだ。
「ふぅ……一限目は数学だったっけ」
教室へ辿り着いた圭介は窓際の自分の席に座ると、苦手な数学の教科書を机の上へ置いた。「そういえば、もう少しでテストかぁ。ハァ……」
本日二度目の深いため息を吐き出すと、クラスメートの遠藤麻衣子が、クルリと巻いた髪をいじりながら圭介の前の席へ座った。
<続く>
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