第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ⑤
体育会系の部活に所属した事がない圭介にとって、これだけ身体を動かす事は春先に行われた体力測定の持久走以来だった。
圭介は激しく息を切らす。
「どしたどした? もう終わりですかぁ!?」
一向にかすりもしない斬撃――足元はふらつき、握力も無くなってきたが、それでも京香に向ける双眸な眼差しは力強さを失ってはいなかった。そして、残る力を振り絞り、再び異形の剣を振り上げようとした瞬間、異変が起きた。
「えっ……?」
握りしめていたはずの異形の剣が無くなった――何が起きたのか理解出来ない圭介は、恐る恐る京香に視線を向けた。
「な……なんで……」
ほんの数秒前まで自分が握りしめていたはずの異形の剣を、目の前の京香が握っている。
いつの間に!? 一体何が起きたんだ!?
信じがたい出来事に、圭介は度肝を抜かれた。
「驚かれるのも仕方がない事です。地球人である君には京香さんの移動速度を捉えられる動体視力は備わっていない。至極当然の事ですよ」
「まさか……そこからここまでの距離を一瞬で!?」
「京香さんレベルの剣使いならば造作も無い事です」
「え~? 何々、それって誉め言葉ぁ?」
「貴女はアホですが、戦闘能力の高さだけは認めています」
「アホは余計だっての! それよりもぉ、中々イカすじゃ~んこの兵器。君がこんなの持ってても豚に真珠だからぁ、アタシが使ってあ・げ・るぅ」
京香は手にした異形の剣を何度か振ってみせる。しかしその最中、京香は妙な違和感を抱き首をかしげた。
「あれ? 何コレ……。無反応なんですけど!?」
「フフフ、やはり私の推測は見事に的中したみたいですね。反応しなくて当然……。それは兵器ではありませから」
「はぁ!? 意味わかんないんですけどぉ~」
「その剣はリアルアートという、絵が具現化したモノ……。つまり中身など空っぽのイミテーションに過ぎないのです」
「リアルアート……」
真田は桐谷の言葉に少し考えて、「確か、第三区に住む一部の画家達が用いる手法だな」
「その通りです真田隊長。まぁ、どういった経緯でその様な能力が発動したのかは存じませんが、所詮は画家の技法……つまり戦闘能力は地球人のままという事です」
「な~んだ。じゃあコレはゴミみたいなモンじゃん」
「さて……どうしますか羽鳥くん。もはや君に選択肢は無いと判断するのが妥当かと思われますが、まだ無駄な悪足掻きを行いますか?」
「……返せよ」
圭介は京香を睨みつける。
「は? こんなゴミ剣を返した所で君に何が出来る訳ぇ?」
「その剣はアンタ達にとってゴミかもしれない……でも、俺にとっては大切な作品なんだ!」
「ふ~ん……アタシさぁ、他人の大切なモノを壊すのが大好きなんだよね~。絶望感漂う表情を見ると感じちゃうんだよぉ……」
京香は卑猥な舌使いで唇を一周ペロリと舐めると、悪意に満ちた笑顔を浮かべながら異形の剣を真上へ放り投げた。
「桐谷ぁ、コレもういらないから消しといて」
「全く……。本当に貴女は飽き性ですね」
高く舞い上がる異形の剣――桐谷はジェノサイドを出現させ銃口を向けた。
「やめろ……やめてくれ!」
「あ~ん。たまんないなぁ、その声……」
圭介が悲痛な叫び声を上げると、それを聞いた京香は湧き上がる光悦感に身体を震わせた。
異形の剣は上空で風車の様に回りながら弧を描いて落下する。桐谷がそれを見据えた瞬間、ジェノサイドからレーザー光線が射出された。
その刹那――
「何!?」
桐谷は両目を見開いて硬直した――ポッドから射出された光の軌跡が、異形の剣に向けて伸びると同時に、別のレーザー光線がアナザーポイントの出口から飛び出した。
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