第四章 ――狂戦士(バーサーカー)舞う―― ③
「大せーかぁい! どぉ? 肝を冷やして涼しくなれたでしょ?」
「アンタ……カラーズ人だったのか」
「うん! アタシはカラーズナインのアーミー、藍沢京香。よろしくねぇ、羽鳥圭介くん」
「な、なんで俺の名前を……」
「名前だけではありませんよ、羽鳥くん」
京香の背後から響く聞き覚えのあるインテリ口調――圭介が視線を移すと、そこには桐谷の姿があった。
「お前……」
「この間はどうも。銀髪の彼女はお元気ですか?」
見下した態度の桐谷に対し、圭介は奥歯をギュッと噛み締め怒りを押し殺す。
「すっかり元気になったよ……。つか、俺をこんな場所におびき寄せて何の用件だ?」
「シンプルに答えるならば、君を殺す為……ですね」
無言の圭介に桐谷は続ける。「卑怯だとお思いですか? 弱者から潰していくのは戦術において常套手段です。小さなひび割れはやがて崩壊へと導く序章……しかしながら羽鳥くん、君の事を調べていく内にとても魅力的な従者だという事が判明しましたので気が変わりました」
「へぇ……じゃあなにか? アンタ達の仲間にでもなれって言うのか?」
「察しがよろしくてなによりです。今回わざわざご足労いただいたのは、君と交渉の場を持ちたいと思いましてね」
「交渉?」
「ええ。君のご両親は有名なアパレル産業を営んでいらっしゃる。つまり、莫大な資産をお持ちだ。他ブレーンで活動を行うにあたり、そういった方を従者にする事は非常に有利……どうです? 我々の従者になっていただけませんか?」
「……なんだよそれ。金目当てで近づいてくる輩ってのは、異世界宇宙人にも居るんだな」
「勿論です。財源は多ければ多い程有利ですから」
「断る。つか、意識でも何でも操作したら俺じゃなくても従者に出来るだろ」
全く動じる事もなくキッパリと拒否する圭介に、桐谷は溜め息混じりの吐息をついて藍沢京香の方をチラリと見た。
「さて、予想通りの返答を頂きましたが、どうなされますか?」
「え~。アタシは羽鳥くんじゃなきゃイヤだからね!」
「……貴女が彼を従者にしたい理由は、彼の両親がアパレル関係だからでしょう?」
「当然よ! この子を従者にしたらカワイイ服がいっぱい手に入るんだよ? そしたらオレオレ詐欺まがいの能力なんかに頼らなくても済むし~」
「……本当に貴女はデリカシーの欠片すらない低脳な方ですね。大体、この従者を始末せずにわざわざ交渉の機会を与えたのは我が儘言い放題の貴女に対して慈悲深い私の親切心によるものです。にもかかわらず私の能力を馬鹿にするなど愚の骨頂……」
「あーはいはい! 桐谷ってマジウザイよね。地球名ウザヤにしたら?」
罵倒する京香に対して桐谷は少しの間沈黙し、
「……やはり貴女には少々躾が必要ですね」
その瞬間、桐谷の右耳につけられているリング形状のピアスが光を放ち、頭上に6つのポッドが浮かんだ。
それを見た京香の顔から笑みが消えた。
「は? 何マジギレしてんの? てゆーかさぁ……前々からアンタの気取った態度がムカついてたんだよね」
鋭い目つきに豹変した京香の首もとのネックレスから光が放たれ、右手に長身の刀が握られた。「いー機会だから調教してやんよ……」
圭介は唖然として二人を見守る。
内輪もめ!? 何なんだよコイツら……。
「二人共そこまでだ!」
二人が散らす火花を吹き飛ばす様な迫力のある声が、無音空間のアナザーポイントに響いた。
圭介が声のした方に目を向けると、大柄な男が桐谷の背後からゆっくりと歩いて来るのが見えた。
桐谷は京香を見据えたまま、
「真田隊長、止めないでください。従者の処遇云々以前に今日という今日は、このアホ女を痛めつけてやらなければ気が済みません」
「はぁ!? 痛めつけられるのはそっちだっての!」
「二人共、今が作戦遂行中だという事を忘れるな。私情のもつれで争っている場合ではない。一旦ソレを鞘に納めるんだ」
大柄な男がそう告げると、桐谷と京香は無言で兵器を粒子化させ、装備を解除した。
「見苦しい所を見せてすまないな、羽鳥圭介くん。我々アーミーは、些細な揉め事ですら武力をもってして白黒をつける戦闘民族なのでな」
「……アンタは?」
「我はこの地区を担当するチームの隊長を務めている真田礼二だ」
インテリで痩躯な桐谷とは対照的に、筋骨隆々な体格にごつい顔つきの真田に圧倒される圭介だったが、怯む事なく精悍な顔つきで真田の顔をジッと見据えた。
「ブレーンワールド」の更新ペースは、新作執筆中のため今のところ分かりません。随時チェックしていただければ幸いです。
ご意見、ご感想など遠慮なくお願いします。ブックマークや評価などしてもらえると喜びます。
ツイッター、新アカウントを立ち上げました。
https://twitter.com/millcity1986




