第三章【第9区―ナイン―】⑰
桐谷が放ったレーザー光線によって周囲の建物は無差別に破壊され、轟音と共に崩れていく。爆風で飛び散った巨大なコンクリートの塊が、身動きの取れない圭介達目掛けて落下する。
「うわあああ――――!」
「圭やん!」
ジェットは2つのポッドを動かし、凶器と化したコンクリートの塊へ向けてレーザー光線を発射させた。コンクリートの塊は瞬時に粉砕され、圭介と真白の身体に砕けたコンクリート片が、パラパラと降り注いだ。
「怪我はないか圭やん!」
「あ……あぁ、大丈夫だよ」
やがて立ち込めていた粉塵は消えたが、圭介達の視界に桐谷の姿は映し出されなかった。
「どうやら立ち去った様だな」
「いや~、咲夜さんが来てくれなかったらヤバかったよ。まさかナインが地球にいるなんて思いもしなか……」
会話の途中、ジェットはしりもちをついてその場にへたり込んだ。
「お、おい!ジェット大丈夫か!?」
「あ、あははは……久々に能力を全開で使ったから、身体が言う事聞かねぇわ」
弱々しく笑顔を浮かべるジェットに、咲夜も微笑んだ。
「フフフ……しかし、よくあの状況をハッタリだけで乗り切ったな」
「アドリブ力には自信があるんだよ。でも、咲夜さんが来てくれなかったら俺マジ死んでたわ。サンキューね」
「礼を言うのは私の方だ。圭介と真白を救ってくれて感謝する」
「いいよ、礼なんか。そんな事よりも真白ちゃんの治療が一番だ。俺達もここから出よう」
☆
アナザーポイントから脱出した圭介達は、重傷を負った真白を治療する為、早急に自宅へ帰った。
真白の治療を花蓮に任せた姫と咲夜の二人は、様子を見に部屋を訪れた。
「花蓮ちゃんお疲れ様。真白ちゃんどう?」
真白の両膝に両手をかざしてヒーリングを行う花蓮は、姫の問いかけに顔を上げた。
「粒子の噴出量は多かったみたいですけど、核化に至る様なダメージではありませんわ」
打ち抜かれた箇所の傷口は既に塞がれ、C粒子の噴出は止まっている。しかし、未だ意識が戻らない真白の顔を、姫と咲夜は神妙な面もちで見つめる。
「すまんな花蓮。私が側に居たならば、真白をこんな目には合わせていなかった。真白の単独行動を甘くみた私の責任だ。猛省しているよ……」
「仕方がないですわ。真白さんは思考よりも行動が優先される方ですから」
「だけど、まさかナインが地球に滞在してるとはね……しかも独立だなんて……」
「ナインに不穏な動きがある事は天の上層部から十分警戒する様、通告はされていたのだが……まさか、他ブレーンでカラーズ人を襲っている犯人がナインだったとはな……」
「敵は軍属……一筋縄ではいかないね。この危機的状況、咲姉はどうするつもり?」
咲夜は少しの沈黙の後、口を開いた。
「まずは作戦会議だ。今日遭遇したナインには仲間がいる。単体ならばともかく、奴らは戦闘エリート集団だ。一個小隊での戦いは奴らの方が長けている。兵器を損失している現在の我々では厳しい戦いが強いられるだろう……」
姫は厳しい表情の咲夜を見つめながら、
「所でさぁ。あのジェットって子、カラーズ人でしかもエイトの特保なんでしょ? なら一緒に共同戦線てのは可能なんじゃない?」
「それは不可能だ」
「え? どゆこと?」
咲夜はベッドに横たわる真白を見つめながら、意外な言葉を口にした。
「アイツはもうカラーズ人ではないんだ」
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