第一章『未知との遭遇?』 ③
「おはよう羽鳥くん! 今日も清々しい朝だねぇ」
圭介と木葉の会話に、甲高い耳障りな声が割って入った。目の前に現れたのは所謂『不良少年』にカテゴライズされる風貌の五人組だった。
「お……おはよう」
「あれあれ~。今日は陸上部のマドンナ『走る巫女ちゃん』を連れての登校ですかぁ!?」
リーダー格とみられる品の無い金髪オールバックの男を筆頭に、五人組はニヤニヤしながら圭介達の行く手を塞ぐ。
「……木葉はただの幼なじみだよ」
「へぇ~。こんなにカワイイ幼なじみがいているなんて、羨ましい限りだなぁ。そんなリア充な羽鳥くんに相談があるんだけどさ」
腰穿きした学生ズボンのバックポケットから財布を取り出すと、バサバサと財布をはたいた。「いや~。今さ、ちょっとハマってるスマホのアプリがあってね。課金しすぎて小遣いを使い果たしちゃってさぁ。また『融資』の方をお願いしたいと思いましてね」
「はぁ!? 何よ融資って! 圭ちゃん、またこんな奴らにお金貸してたの!?」
木葉は無言で俯く圭介にさらに続ける。「ダメだよ貸しちゃ! 融資とか体のいい事言っても、コイツらのやってる事は恐喝なんだからね!」
「おいおい……恐喝だなんて聞き捨てならないね~。あくまでも羽鳥くんに『融資』を受けてるんだよ。ホラ、これ見てみなよ」
財布から一枚の紙を取り出すと、怒り心頭の木葉の目の前に広げた。
「借用……書? 羽鳥銀行!? 何よコレ!」
「俺等は『羽鳥銀行』の顧客な訳。つー事でぇ、諭吉さん一枚、追加融資をお願いしますよ」
金髪の男子生徒は悪意に満ちた表情で圭介に迫る。
圭介は無言でショルダーバックの中から財布を取り出した。
「ちょ……ちょっと圭ちゃん!」
「流石は困った時の羽鳥銀行さんだ。いつもながらスピード融資なのは本当に助かるね~。じゃ、また頼むよ」
圭介から一万円札を受けとった金髪の男子生徒は、取り巻きの生徒を引き連れ立ち去った。
「……木葉、行こうか。遅刻するぜ」
圭介は何事もなかったように木葉にそう促した。
「行こうか……じゃなくて圭ちゃん! なんなのよアイツ!」
「D組の田代だよ。入学した時からカモにされちゃってさ。まぁ……別に金なんて持ってても鳩の餌買うぐらいだし。それに、断ったりでもしたら殴られそうだからな」
圭介は楽観的な笑顔を見せる。
「本当に……このままでいいの?」
木葉は悲しげに圭介を見つめた。「こういう事はちゃんと断ち切らないと、また中学校の頃みたいに……」
「いいんだよ!」
「圭ちゃん……」
木葉の問いかけに感情を露わにした圭介だったが、一呼吸おいて気持ちを落ち着かせると、元の穏やかな表情へ戻った。
「ごめんな、デカい声出して……。とにかく急がないと遅刻するぜ」
木葉にそう告げた圭介は、心の中に渦巻く『本当』の気持ちを押し殺しながら、足早に歩を進めた。
<続く>
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