第三章【第9区―ナイン―】⑭
「ほぉ……。圧倒的武力を前にして怯まないとは、中々勇気のある従者ですね」
「……なぁ、アンタは一体何者なんだ? 地球はアンタらの保護区域なんだろ。何でカラーズ人同士で争ってるんだよ!?」
「従者如きに話す事など何もない……と言いたい所ですが、その勇ましさを評して特別に少しだけ教えてあげましょう。私の地球名は桐谷忍。出身区域は第9区、カラーズナインのアーミーです」
桐谷と名乗る男の言葉を聞いた瞬間、真白の表情が強張った。
「ナイン……なんでナインが地球に……」
「さて、これ以上の情報は必要ないでしょう。貴女はこれから核化し、従者は絶命するのですから」
桐谷の口から発せられた『絶命』という言葉――
普通の高校生活を送っていたならば、決して向けられる事は無いであろう言葉。つまり、この男は自分の命を奪おうとしているのだ。
まるで現実味が湧かないが、絶対絶命のピンチに遭遇している事は間違いない。圭介はこの危機的状況を回避する為の案を模索する。
「なぁ、一つ質問していいか?」
「いいでしょう。但し受け付けるのは一つだけですよ」
「……アンタらの目的が何なのかはわからない。でも一つだけ分かる事がある」
「ほぉ、それは是非とも聞きたいですね」
「アンタは真白に兵器を装備しろと促した。カラーズ人を核化させる事だけがアンタの目的なら、わざわざそんな事を言わなくても、そこに浮いてる兵器があれば造作もない事だろ?つまり、アンタは強い奴と戦いたい……違うか?」
「ご名答……と、言いたい所ですが、少々捉え方が違いますね……」
桐谷は清潔感が漂う黒髪をかきあげながら淡々と続ける。「私が装備を勧めたのは、強者と戦いたい訳ではありません。私にとって戦いとは食事。どうせ食べるのならば、美味いモノを食べたいでしょう?」
圭介はその言葉に戦慄を覚えた。この男にとって自分達よりも下位区域のカラーズ人など、敵として認識していないのだ。
イかれてる……コイツは冗談抜きでヤバい奴だ……。
言葉を失い立ち尽くす圭介に、桐谷は口を開いた。
「質問は以上ですか? ではそろそろ攻撃を開始します」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! もう一つだけ質問させて……」
「質問は一つだけ……と言ったでしょう? 時間稼ぎをしているのが見え見えですよ」
「くっ……」
「往生際が悪いですね。まぁ、地球人の一生など神の瞬き程の時間しかないですから、それも察しますが」
逃げ道が無い――
大ダメージを負った真白は戦闘不能。しかもここはアナザーポイントの中だ。助けを呼ぶ事も不可能――完全に追い込まれた圭介に、もはや策は無かった。
「フフフ、何も恐れる事などありません。地球人の身体構造ならば、一瞬にして全身の水分が蒸発し、絶命に至りますから」
桐谷はこれから命を奪おうとする者の言葉に聞こえない程、淡々と言葉を紡いでいく。頭上に浮かぶ6つの物体が何かを吸い込むような金属音を奏でると、銃口が妖しく光り出した。
「この場所ならばキミの屍は発見される事はない。迷宮入り確定の失踪事件が一つ増えるだけです」
銃口から発せられる光が徐々に強さを増す。その時、圭介の頭の中に猛烈なスピードで『映像』が流れ出した。
おいおい……何だよコレ……。
それは幼い頃から現在に至るまでの記憶だった――
もしかして走馬灯……ってヤツなのか? 俺、本当に死ぬのか? こんな所で人知れず? マジか……俺って一体何の為に生まれてきたんだよ……。俺の『意味』って何だったんだよ!? クソ! 死にたくない! 考えろ、考えろ! 何か他に方法は……。
「さて、私も忙しい身ですので、お二人とはこれでお別れです」
光は直視する事が出来ない程に光量を増していく。圭介は思考を最大限に巡らせるが、打開策は思い浮かばない。
もはやこれまでかと諦めかけたその時、目の前に真白が両手を広げて立ちふさがった――
「ま……真白……」
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