第三章【第9区―ナイン―】⑫
アナザーポイントに身を投じた圭介は、息を殺しながら周囲を見渡す。元の空間と何ら変わらない路地裏の風景――異なるのは、街の喧騒が耳に届かなくなった事と、目の前にあったアナザーポイントの入り口が背後にある事。
圭介はピンと張り詰めた空気を全身に感じながらゆっくりと歩き出した。
「この先は確か……」
路地裏を抜け、開けた場所へ出る。そこは数々のショップや雑貨屋が立ち並ぶ裏通りの商店街だった。圭介は三差路になっている道の右手方向に、真白らしき後ろ姿を確認した。
「真白!」
圭介はすぐさま真白の元へ駆け寄った。 「大丈夫か!? 一体何が……」
「やめて……もうやめて!」
圭介に見向きもせず、真白は緊迫した表情で声を上げた。圭介は真白の視線の先を目でたどった。
「え……」
そこには若い男が二人対峙していた。一人は日本刀とみられる刀を構え、対峙するもう一人の方は腕組みをしたまま立っている。状況から判断するなら、素手の男が刀を持った男に襲われている様に見えるのだが、圭介は瞬時に違和感を覚えた。
圧倒的有利に見える日本刀男の衣類は所々破れ、怪我を負っている。それに比べて素手の男は無傷の上に余裕綽々で不敵な笑顔を浮かべているからだ。
「何やってんだよ、アイツら……」
「お願い! もうカラーズ人同士で傷つけ合うのはやめて!」
「カラーズ人……何でカラーズ人同士が戦ってんだよ!?」
圭介は素手の男の頭上に奇妙な物体が浮かんでいる事に気付いた。 「何だアレ……」
それはボーリングのピンの様な形状をした銀色の物体だった。先端部には銃口らしき穴が開いている。
「君達! 一刻も早くこのポイントから出るんだ!」
圭介の存在に気付いた日本刀を持つ若い男は、対峙する男を凝視しながら叫ぶ。「聞こえているか! 早く逃げろと警告している!」
「あの、アンタは……」
「私はカラーズ6の保安官だ。ここから出て他の仲間に伝え……」
保安官を名乗る若い男が圭介をちらりと見た瞬間だった。
「ぐあっ!」
圭介と真白は衝撃的な光景を目の当たりにした――
空中に浮遊する物体から放たれたレーザー光線の様な一筋の眩い光が、保安官の胸を貫いたのだ。
「――――!?」
言葉を失う圭介を更に驚かせたのは、貫かれた部分からは鮮血ではなく、赤い粒子が吹き出した事だった。
「困りますね……。せっかく自ら入ってきた獲物を逃がす様な事はさせませんよ」
素手の男がそう呟くと、浮遊している6つの物体から再びレーザー光線が放たれた。
右腕、左肩、大腿部、胸部、腹部――保安官の身体へシャワーの如く降り注ぐレーザー光線が全身のあらゆる部位を幾度も幾度も打ち抜いていく。保安官の身体からはおびただしい量の粒子が噴出した。
まるで公開処刑さながらの残酷な光景を眼前で見せつけられた圭介と真白は、身動き一つ取る事が出来ない。攻撃を受け続ける保安官の身体は、刀と共に全て粒子となって消滅した。地面には核とみられるクリスタルの様な石が残された。
「カラーズ第六区では所詮この程度ですか。やはり、我々を楽しませてくれるカラーズ人は天にしか存在しないのですかね……」
男はスタイリッシュなモノトーンのスーツについた埃を手で払いながら、核の方へ歩み寄り、
「核化したカラーズ人程無力なモノはありませんね。こうなってしまえば例え地球人にでも破壊する事が出来てしまう、脆く儚い物体に過ぎない」
核を指で拾い上げると、スーツのポケットへ入れた。
「さて……次はあなた達の番ですね。とりあえず所属区域を聞いておきましょうか」
男は圭介達を見据えた。頭上に浮遊する6つの物体が動き出し、圭介達に銃口を向けた形で空中に停止した。
圭介は身に迫る絶体絶命の危機感に顔面蒼白になった。
「あれが兵器ってやつなのか……。真白アイツはヤバいよ、逃げた方が……」
「許さない……」
「え……真白!?」
「許さないっ!」
まるで獣の様な鋭い攻撃的な目つきに変貌した真白は、これまで圭介が聞いたことのないような鋭い声を上げた。
圭介はそんな真白を見て思わず息を飲んだ。
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