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ブレーン×ワールド  作者: ミルシティ
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第三章【第9区―ナイン―】⑦

 重々しい空気のリビングを後にした圭介は、アトリエに入ると深い溜め息をついた。


「真白……凄く哀しい顔してたな」


 いつも元気な真白の顔に差し込む陰――圭介はいつも自分を励ましてくれる真白の明るさを取り戻したいと切に思う。

「俺に出来る事なんて少ないかも知れないけど……」

 そう呟きながら、購入した画材を机の上に広げ、絵の具のチョイスを始める。

「よし、まずは練習がてら……」

 椅子に腰をおろし、キッチンから持ってきた瑞々しいリンゴを机の上に置いた。そして左手に鉛筆を持ち、キャンバスにリンゴを描き始める。

 そして数分後――


「よし、出来た」


 瑞々しさを絶妙に表現したリンゴの絵は、今にもキャンパスから取り出せそうなくらい精巧で美しい。

「凄いな……。自分で描いてこんな事言うと自意識過剰に聞こえるけど、本当にこれが俺の描いた絵だなんて未だに信じられないよ……」


 圭介があらゆる角度から絵を眺めていると、アトリエの扉が開いた。


「真白? 部屋で休んでなくて大丈夫なのか?」


 扉の前で無言のまま佇む真白の哀しげな表情を見た圭介は、胸を締め付けられる思いでかける言葉を模索する。

「えっと……なんか大変な事が起きちゃったみたいだな」

 真白は圭介の問いかけに無言のまま下を向く。そんな真白を見て、もっと気の効いた言葉をチョイス出来ないものかと、圭介は自分自身に歯がゆさを覚えた。

 クソ……言葉が浮かばない。こんな時、自分のコミュ力不足を実感するぜ。

 かける言葉を頭の中で再検索していると、真白が顔を上げた。

「けーすけ……そっちに行ってもいい?」

「あ……あぁ。いいよ」

 真白はテクテクと圭介に向かって歩き出す。目の前に到達した真白の顔を見た圭介は、胸を更に強く締め付けられた。

「真白……」


 下唇をキュッと噛み締め、猫の様に大きな瞳からポロポロと大粒の涙を零す真白は、声を震わせながら言葉を紡ぎ出した。


「昔ね……真白のともだちも、あんな風に石になっちゃたの。いっぱい……いっぱい石になっちゃたんだ。そしてその石を壊されちゃったの……」

「そっか、辛い事を思い出したんだな……」

 感情を露わにした真白の姿に涙腺を刺激された圭介は、椅子から立ち上がり真白の身体を引き寄せた。

「……けーすけ」

 華奢な真白の身体を両腕で力強く抱きしめる。それは、何も出来ない自分の不甲斐なさから出た精一杯の行動だった。

「ごめん……いつも、鳩の頃から俺を癒やしてくれて、励ましてくれて、救ってくれて……。なのに俺は、真白の力になってあげられない……何もしてやれない。悔しいよ……」


 思いの丈を真白に伝えた圭介から溢れ出る涙と感情――その気持ちを感じ取った真白の表情に微笑みが戻る。


「ん~ん……けーすけあったかい……真白はけーすけが側にいるだけで、凄く嬉しいよ」

 圭介と真白は無言のまま抱き合う。重々しい空気は消え去り、アトリエの中は暫し静寂に包まれた。

「……ねぇ、けーすけ」

「ん?」

「あのリンゴの絵、美味しそうだね」

「ハハハ、お前はホントに食べ物には目がないな」

「地球の食べ物美味しいんだもん」


 圭介はゆっくりと真白の身体から両腕を離し、先程描いたリンゴの絵を手に取る。


「こんなに上手く描ける様になったのも、真白達のおかげだよ。皆と出会えてなかったら、俺はずっと無能なままだった。心の底から感謝してるよ……」


 圭介は描いたリンゴの絵を左手で愛でる様にさすった。その瞬間、左手首にはめられているリングが眩いばかりの光を放った――


「――!? な、何だコレ!?」


「ブレーンワールド」の更新ペースは、新作執筆中のため今のところ分かりません。随時チェックしていただければ幸いです。


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