第三章【第9区―ナイン―】②
「何でここに……お前、確か海成高校の寮に入ったはずじゃ……」
「あぁ、実家に用があってさ。そしたら偶々通りかかった路地裏で圭ちゃんの一大決心を耳にしたって訳だ」
ジェットと呼ばれる男子高校生は爽やかな笑顔で圭介と言葉を交わす。
田代は眉間にシワを刻んだ。
「久しぶりじゃねぇか、ジェットォ……」
「あれ? お前中学ん時の。ん~、名前なんつったかな……ハハ、覚えてねーや」
「テメー……」
「田代さん、誰すかコイツ? 随分とナメた態度してますけど」
取り巻きの一人の言葉に田代は、
「中学ん時の同級生で月島潤って奴だ。女好きで有名なナンパ野郎だよ。とにかく女に手を出すのがはえー奴で、あだ名がジェットってんだ」
「へ~。俺ぁこういうチャラい奴が一番嫌いなんすよ。とりあえずコイツヤッちゃいますね」
「おい、ちょっと待て。コイツは……」
田代の取り巻きの一人、坊主頭の男が威圧感を纏ってジェットの前へ立ちふさがる。
「よぉ、お前キレイな顔してんなぁ。二度とナンパができねーくらい顔の形変えてやんよ!」
坊主頭の男は爪楊枝の様に細い眉毛を尖らせながら、ジェットに凄み拳を振りかぶった。その瞬間――
「ゴハッ!」
ジェットの右拳が顔面にめり込んだ。坊主頭の男はそのまま後方へ仰け反り、後ろに居た取り巻きの方へ吹き飛ばされ気を失った。
「で、お前ら俺の幼なじみ囲んで何やってんのかな?」
「ちっ! 相変わらず手が早い野郎だな……。つーかよぉ、幼なじみのくせに中学ん時は俺達が羽鳥から金借りてる所見ても我関せずだったじゃねーか。一体どういう風の吹き回しだ!?」
ジェットは髪をいじりながら、
「圭やんが金という名の『盾』を自ら投げ捨てたから……かな」
「ジェット……お前……」
「意味わかんねー事言ってんじゃねーぞ! まずはテメーからフルボッコだ。お前ら! チャラく見えてもコイツはケンカが強え! 油断するんじゃねーぞ!」
圭介を囲んでいた取り巻きがジェットにターゲットを変え、ジリジリと詰め寄る。しかし――
「ゴホッ!」
「グアッ!」
「ガハァ!」
取り巻き達はまるで隼の様な速さで攻撃を繰り出すジェットに、次から次へと倒されていく。
「あー、かったる~。やっぱお前らつまんねーわ」
息すら切らすことなく涼しげな表情のジェットは、地面にひれ伏した取り巻き達を見下ろす。
その光景を目の当たりにした田代の額に脂汗が滲んだ。
「ど……どうなってんだ……。攻撃が全く見えねぇ……」
「ガタイがいい奴ばかりだから少しぐらいは楽しめるかと思ったけど、所詮はザコキャラだったね~」
ジェットは制服の埃を払いのけ、両拳を鳴らしながら田代に詰め寄った。「さて、本日付けでお前が利用していた羽鳥銀行は閉鎖だ。二度と圭ちゃんにまとわりつくんじゃねーぞ」
「わ……わかった」
「物わかりがよくて結構! 因みに借りた金はきっちり取り立てっから、ちゃんと用意しとけよ。あ、これは『利子』の代わりな」
右ストレート一閃――田代の意識は瞬時に途絶えた。
「んー! スッキリ!」
「ジェット」
満面の笑みで田代を見下ろすジェットに、圭介は声をかけた。
「何?」
「助けてくれて、ありがとな……」
「ハハハ、礼なんていらねーよ。じゃあ帰ろうぜ」
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