第二章『アナザーポイント』㉒
圭介は次から次へと上から目線で指示を出してくる咲夜の意図がまったく理解出来なかったが、渋々従う事にした。
真白は咲夜に促され、美術の授業と同じポーズを取る。
「あれ……?」
鉛筆を紙に滑らせた瞬間、圭介はただならぬ違和感を覚えた――
「どうなってるんだよコレ……」
描き上げた真白のデッサンを見て、圭介は茫然自失となった。それは美術の授業に描いたモノとは全く『違っていた』。
「なんで……下手になってるんだ……」
粗い線に不自然な陰影やハイライト。モデルが真白である事すら判別出来ない程の凄惨を極めた作品。今までどれだけ不調になっても、これほどまでに酷い絵を描いたのは初めてだった。
「咲夜、一体俺の身体に何をしたんだ……」
「神経細胞の情報を少々書き換え、身体構成の再構築を行った」
「神経……? つまり俺の身体をいじったって事かよ……」
「その通りだ」
「なんでだよ? なんでこんな事するんだよ……」
「お前の持つ『本当』の才能を引き出す為だ」
その言葉を聞いた瞬間、圭介は鉛筆を床に叩きつけた。
「ふっ……ざけんな! 俺はそんな異能に頼ってまで絵が上手くなりたい訳じゃないんだよ! 確かに俺の絵は人並み以下だよ! でも……それでも! 今まで積み上げてきたモノをブチ壊す権利なんて誰にもないんだ! 元に戻してくれよ!」
激高する圭介を前に、咲夜は口元に笑みを浮かべた。
「思った事をちゃんと言えるじゃないか。お前はもう少し自分の殻を破るべきだ」
圭介は我に返り、
「……ごめん、大きな声出しちゃって」
「謝罪の言葉など無用だ。説明が足りなかった私の方こそ悪かった。因みに私はお前の身体を弄った訳では無い」
「じゃあ……なんで急にこんな風にしか描けなくなったんだ?」
「元に戻したのさ。生まれた時のお前の身体構成にな」
目を丸くする圭介に咲夜は続けた。「もう一度真白を描いてみろ。今度は『左手』でだ」
さっぱり意味がわからない圭介だったが、大きく深呼吸をして気持ちを鎮めた後、新しい鉛筆をペンケースから取り出して、再び視点を真白に集中させた。
「左手で……」
鉛筆を左手の指にくぐらせた瞬間、圭介は不思議な気持ちを感じた。
「あ……れ?」
それはまるでジグソーパズルのピースとピースがぴったりと合わさった時の感覚にも似た気持ち良さだった。その感覚は紙に鉛筆を滑らせた時、更に倍増した。
「描ける……描けるぞ……」
幾つもの線を紙に重ねていく。真白の髪、肌、瞳、陰影――左手で描いているのにも関わらずイメージ通りのラインを繊細かつ力強く描いていく。
無我夢中、一心不乱に描き上げたデッサンを見つめる圭介は「出来た……」と呟くと、そのまま言葉を失った。
四人は描きあげられた絵を覗きこみ、
「うわぁ~! 凄ぉい! スッゴく綺麗な真白だぁ!」
「素晴らしいですわ、圭介様。これが圭介様が本来持つ実力ですのね」
「うひょ~! 何コレ!? けーくんヤバいじゃん!」
「うむ、最高の出来映えだな。文句一つ無い」
「本当に俺が描いた絵なのかコレ……」
「その通りだ、圭介。正真正銘お前が描いた絵だよ」
暫し絵を見つめた圭介は、ふと浮かんだ疑問を言葉にした。
「あのさ、何で左手で描けるんだ? 俺は右利きなんだけど……」
「先程お前の記憶を辿らせてもらった。まだ物心がついていない幼い頃だから覚えていないだろうが、お前は元々左利きだったのさ」
「左利き……俺が?」
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