第二章『アナザーポイント』⑰
「あらあら、手加減したつもりでしたのに。少々力が入り過ぎたようですわね……。申し訳ございませんでした」
花蓮は倒れている男に深々とお辞儀をし、謝罪の言葉を述べる。力なく地面に横たわる男の左頬に真っ赤な『紅葉』が浮き上がってきた。
真白の時と同様、何が起こったのか全く把握出来ていない圭介は、近くにいる真白に質問を投げかけた。
「……あのさ真白、花蓮って今何やったの?」
「え~っとね、こーやってほっぺたをパチーン! って叩いたんだよ」
真白は右手の手のひらを開いて素振りをして見せる。
「ビンタの音だったのか……。俺にはショットガンを放った音が聞こえたよ……」
単なる平手打ちですら異世界宇宙人が放つと強力な武器と化す――圭介は真白に瞬殺された男子生徒の事を思い出し、改めて異世界宇宙人の戦闘能力に驚愕した。
「花蓮、ご苦労だった。では『出して』くれ」
「了解致しましたわ」
咲夜の指示を受けた花蓮は横たわる男の側にしゃがみ込み、何やら後頭部付近を右手で触り始めた。
「花蓮、何してんだ? 真白……出すってなんだよ?」
「ん~っとね、ここからこーやってぇ、うぬりゅりゅりんっ! てやるとぉ、ぶにゅんっ! て出るんだよ」
うわぁ……、咲夜と違って真白の説明、全然わかんねぇ……。
身振り手振りで説明を行う真白だが、表現が乏し過ぎて圭介はまったく理解できない。
「けーくん、今から花蓮ちゃんがやる事はちょっと『グロい』から、気を引き締めといた方がいいよ~」
「グロ……い?」
姫に警告されて、圭介は恐る恐る花蓮の方へ視線を移すが、彼女が取った行動に言葉を失った。
「――!?」
花蓮は男の延髄部分にズブリと指を『入れて』いる。圭介はそれを見た瞬間、花蓮が男の首を切開したのかと思ったが、どこからも出血はないようだ。しかし、確実に男の首には花蓮の指が入っている。それはまるで手品でも見ている様だった。
「どうだ花蓮、見つかったか?」
「えぇ、やはり居ましたわ」
咲夜に聞かれた花蓮は、指を男の首からゆっくりと引き抜いた。圭介は興味津々に目を凝らして男の首を見るが、首には傷一つない。
「凄いけど、特にグロい事なんてないじゃん。なぁ姫、花蓮は一体何をやったんだよ?」
「ここからここから……花蓮ちゃんの右手を見てみなよ」
「右手?」
ニヤつく姫の言葉に、圭介は花蓮の右手を注視する。
「ん? 何も持ってないけど……」
花蓮は何も持ってはいないが、右手は『何か』を持つ仕草をしている。圭介が暫く見ていると『異変』が起きた。
「ん……? んんっ!?」
何も無かったはずの花蓮の右手に『何かが』浮かび上がってきた。
「う……うわぁ――――! 何だよアレ!?」
巨大なヒルの様な形をした物体が姿を現した。その表皮は銀色で、蓮の蕾の様な穴が全身に空いている。
「フフフ……。大騒ぎだな、圭介」
「そりゃ騒ぐだろ! キモいしグロいし直視出来ねーよ!」
「これは『ナイトメアニードル』という寄生生物だ」
「寄生……生物? じゃあ、そこに倒れてる男の中に入ってたって言うのか!?」
「あぁ。ナイトメアニードルは飛来する隕石の内部に生息していて、各ブレーンの知的生命体に寄生する厄介な代物なんだ」
「それじゃ、あの男に寄生して身体を乗っ取ったって事か? だから凶暴化して遠藤さんを襲ったのか……」
「いや、それは違うな。ナイトメアニードルは知的生命体に寄生しても身体には何ら影響は無い」
「え? じゃあ何で遠藤さんを……」
咲夜は右手の人差し指をこめかみに当て、
「奴らは『理性』を奪うのさ。理性は地球人然り、カラーズ人然り、あらゆる知的生命体にとって生きていく為には必要不可欠なモノだ。理性が欠落した知的生命体はリミッターが外れた機械同様に暴走する。そして、底の無い欲望や衝動を抑えきれず、本能の赴くまま行動に走るんだ。その例がこの男さ」
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