第一章『未知との遭遇?』 ⑪
自称咲夜の言葉を遮る、聞き慣れた甲高い声が響いた。
「はーとーりくぅ~ん!」
圭介をカモにしている金髪田代軍団が、昨日に引き続きまたもや現れた。
「あれぇ~!? 何このかわいい子達? 朝っぱらからハーレムモード全開だねぇ」
「いや……これは」
「中々来ないと思って迎えに来たら、モテモテで羨ましい限りだねぇ」
「迎えって……」
「あぁ、また融資の方をお願いしますよ」
「え!? 昨日一万円貸したばかりじゃないか!」
「いやいや、オレのハマってるアプリ、ファイナルファイターズっつーんだけどぉ。羽鳥知ってる?」
「あ、あぁ……」
「あのゲームに君臨してる絶対王者とか呼ばれてる『無双天女』って調子コいた奴いるじゃん? 気にくわねーから、どーしてもアイツに勝ちたくてさぁ。それで装備を買う為に昨日融資受けたお金全部課金しちゃったんだよ~」
マジか……『喧嘩上等』ってしつこく対戦挑んでくるログインネーム、コイツだったのか……
昨日、手も足も出させずに叩きのめした激弱プレイヤーが、田代だと知った瞬間、圭介は愕然とした。あの趣味の悪いアバターが、巻き上げられた金で作られてたなんて……。それを知らずにフルボッコにした俺って一体……
「そうだ、ちょうどいい。今日はお金の融資とは『別』の融資もお願いしちゃおっかな~」
「別の融資?」
田代は仲間の一人を呼び寄せ、悪意に満ち溢れたニヤケた視線を自称真白達に向けた。
「コイツさ、空手の黒帯持ってんだけどぉ、女の子には全く縁がなくてね~。その子達のどれか融資してあげてよ。おい、どの子がいい?」
田代に呼ばれた体格のいい男子生徒は、表情こそ無表情だが、口元をいやらしく緩ませて、無言で自称真白を指差した。
「ふ~ん。あの子が好みか。じゃあ羽鳥君、あの子借りるよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ! この人達は何も関係……」
止めに入ろうとしたその時、圭介は他の仲間に後ろから羽交い締めにされた。
「はっは~! じゃあオレはあっちのメガネ美人のお姉さんを融資してもらうよ。ついでに、デート代の融資もお願いしますよ、羽鳥君!」
自称真白の前には体格のいい男子生徒が立ちふさがり、無言のまま全身を舐めまわすように見ている。戦々恐々とした空気を切り裂く様に自称咲夜が言葉を発した。
「真白、10パーセント……いや5パーセントでいい」
「わかった~。せ~のぉ!」
その刹那――羽交い締めにされている圭介の目の前を『物体』が通過した。
「……え?」
圭介が通過した物体の方向へ視線を移動させると、そこには体格のいい男子生徒がピクピクと全身を痙攣させ、口から泡を出して仰向けで倒れている。羽交い締めにされたまま、圭介は困惑して思わず声を上げた。
「えー!?」
「真白、今のは確かに5パーセントか?」
「うんっ!」
「……そうか。私が想定していたよりも地球人のスペックはかなり低いのだな」
「あ……ありえない」
そう――圭介の言う通り、ありえない事態が起きていた。
自称真白が立っている場所から、気絶している体格のいい男子生徒までの距離は約10メートル。この距離まで人間が飛ばされる事など、ありえないのだ。更に圭介が驚いた事は、気絶している体格のいい男子生徒の顔には『打撃痕』がついているという事だった。
まさか……殴り飛ばしたって事か!?
オンラインゲーム『ファイナルファイターズ』をプレイするにあたって、参考の為に格闘技を研究していた圭介は、屈強な格闘家の打撃でも人間を10メートルも殴り飛ばす事など物理的に不可能な事ぐらい理解している。ましてや体格のいい男子生徒は身長約180センチ、体重は100キロはあろうかという巨漢。
それに対し、自称真白は身長約150センチ程で、体重は多く見ても30キロ半ば。つまりそんな華奢な身体で、巨漢を殴り飛ばしたという事になる。
『鳩に擬態していた事』『自称咲夜による記憶の操作』そして物理法則など完全に無視した自称真白の『攻撃力』。これらを目の当たりにした圭介の猜疑心は、一掃されつつあった。
コイツら……本当に宇宙人かもしれない……
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