ストリート演奏当日の朝(1)
東京駅丸の内南口広場でのストリート演奏当日となった。
光は例によって、朝寝坊になりかけたけれど、さすがルシェールは抜かりがない。
午前6時半には、光の部屋に入り、光の頬にキス。
驚いた光の口に、小さな甘目のプリンを流し入れる。
光は、これで、完全に目が覚める。
「わ!美味しい!懐かしい味!」
ルシェールは、その光の顔を、豊かな胸で包み込む。
「ふふん、これは私の味だよ」
「奈良の教会で一緒に食べたよね、マリア様の前で」
光の顔は、ルシェールの胸に「めり込んでいる」ので、光は声を出せない。
それでも、ルシェールの気持がわかったのか、光もしっかりとルシェールを抱きしめる。
ルシェールは満足、ようやく光を解放する。
「これをずっとしたかった、毎日でもいいかな」
光は、真っ赤な顔。
「うん・・・」
最高の目覚ましとは、恥ずかしくて、とても言えない。
ルシェールがクローゼットから、衣装を一式。
「私が、縫いました」
今度は、ルシェールが少し恥ずかし気な顔。
濃紺のベルベットのジャケット、白いシャツ、赤いベルベットのネクタイだった。
光は、また感激した。
「ありがとう、ルシェール、本当にうれしい」
そしてまた、ルシェールを抱きしめる。
ルシェールは、真っ赤な顔。
「私もうれしい、ずっと、縫いたかった」
「そして、光君に抱きしめられたかった」
光は、ウルウルとなっている。
さて、そんな光とルシェールの様子は、巫女たちには全員が感じ取られていた。
春奈は、実に寂しい。
「私との時は、ほとんどなかった、喧嘩になって仲直りして、やっと抱きしめてくれた」
ソフィーは仕方ないとの考え。
「春奈さんも私も、どうしても、年上過ぎで、つい光君に怒ってしまう」
「むしろルシェールが、春奈さんに一歩も二歩も引いていたのが、問題だったかもしれない」
由香里は、あらためてルシェールの強さを実感。
「光君のマネージャーとして、いろんな交渉をしながら、ジャケットまで縫ってしまう、ルシェールの実力も、光君を思う気持ちも、半端ではない」
「まあ・・・それに追いつけるよう、さらなる自分磨きかな」
由紀は、冷静。
「私は私。私の方法で、光君の近くにいる、居続ける」
「ルシェールが最短距離で、ほぼ確定なのは、前からわかっていた」
「でも、私も光君から離れたくない」
華奈は、やはり落胆、反省しきり。
「やはり努力が足りなかった、お母さんの言う通りだ」
「幼馴染だけでは、無理だよね、ルシェールもそうだもの」
「はぁ・・・無理かなあ、この時代では」
柏木綾子は、ほぼ断念。
「とても無理、入り込めない、実力差があり過ぎ」
「となると、良きお付き合いをするのみ、救ってもらった御恩には答える」
また、外国人巫女は、考えがはっきりしている。
キャサリン、サラ、春麗の考えは、ほぼ同じ。
「まずは、光君の好感度を上げること、この時代で難しければ、次の時代にチャンスもある」
やはり、ルシェールの力が万全にして最強、とても巫女間バトルは発生しそうにはない。




