楓の涙を光が慰める、もう一つの目的は御神楽?
ずっと黙っていた光が、楓に声をかけた。
「来たいの?」
言葉は、それだけ、他には何も言わない。
楓は、途端にウルウル、シクシクと泣き始める。
「聞きたいもん、行きたいもん・・・」
「みんな、意地悪だよ」
「文句ぐらい、言わせてよ」
「ずっと一人で、私だけ奈良なの」
「寂しいもの」
「光君の笑顔も見れない」
「困った顔も見れない」
「そんな生活をずっと、ずっと・・・」
「どれほど辛いかわかる?」
「どれほど寂しいか、わかる?」
「わがままって、言われても、私はわがままだもん」
「知っているでしょ?そんなの」
光は、やさしかった。
「じゃあ、おいで」
「東京駅だよ」
「そのまま、家に泊まってもいい」
楓は、また泣く。
「だって、ルシェールが勉強しろって・・・意地悪する」
光は、またやさしい。
「新幹線で勉強して、家に泊まったら、僕がわからないところ、教える」
「どう?それで」
「来てくれる?」
そう言われると、楓は「うん」と頷くしかない。
涙を拭いて、光の顔を見た。
光は、楓に微笑む。
「それと、お願いしたいことある」
「持って来て欲しいものがある」
楓は、キョトンとした顔。
光の次の言葉を待つ。
光は、少し真面目な顔に戻る。
「春日様のお守りが欲しい」
楓
「うん、それは簡単だけど・・・」
光は、真顔のまま。
「どうしても、必要なものの一つなの」
その会話が続く中、ルシェールは、光の意図をわかっていた。
「つまり、御神楽にしたいのかな」
「おそらく、ステージを設けて、春日様の舞をする」
「それには、春日様の護符が欠かせない」
春奈とソフィーも、途中から光の意図を見抜いた。
春奈
「浄化と万物繁盛の御神楽かな」
ソフィー
「まさに、東京駅には、最適」
途中から、楓につられて泣き出していた華奈は、光に感激。
ルシェールも許したので、そっと隣に座っている。




