ストリート演奏打ち合わせ会議(1)
テロリストの一連の危険な計画を阻止した光は、東京駅丸の内南口広場でのストリート演奏の打合せを、光の家の2階の大広間で行うことになった。
光の音楽家としてのマネージャーとなったルシェールの連絡により、様々な人が集まっている。
まず、演奏家としては、光は当然として、巫女の面々。
それに進学する音大からは、大指揮者の小沢氏、大ピアニストの内田氏、音大学長、華奈が危険視するヴァイオリニスト晃子、それに母菜穂子からのお付き合いの弦楽五重奏団「光」のメンバー。
次に警護を担当するソフィーは当然として、江戸の大親分、テロリスト対策でまたしても光に助けられた坂口氏も顔を見せている。
そしてストリート演奏の様々な仕掛けや、イベント進行担当として、日本最大の大財閥当主の岩崎義孝と、その大財閥配下の大手広告会社の専門スタッフ。
尚、岩崎義孝の孫、岩崎華は「どうしても」と願い出て、演奏家グループに参加することになった。
打合せは、マネージャーのルシェールの司会で始まった。
「皆様、本日は、諸事多忙の中、東京駅丸の内南口広場でのストリート演奏打ち合わせ会議に、心良く参加され、光ともども、心から感謝申し上げます」
「それでは、当家の当主、光より、ご挨拶を申し上げます」
光は、立ち上がり、全員に頭を下げ、挨拶を始める。
「今、ルシェールが申した通り、丸の内南口広場でのストリート演奏計画に、心良く賛同され、そして本日の打ち合わせ会議にもご参加なされ、厚く御礼申し上げます」
比較的丁寧な光の口調に、全員の注目が集まる。
光は、挨拶を続けた。
「今回の試みは、街行く人たちに、心のこもった音楽の楽しさをプレゼントしたいと思ったのが原点」
「演奏家が、聴衆に感動を押し付けるとか、そんな傲慢な気持ではなくて、素直に音楽の楽しさ、喜びを感じていただいて、生きる気力を盛り上げてもらいたいという思い」
「楽しく生きている人にも、そして特に辛く生きている人には、僕たちの音楽を通じて、出来れば歌ってでもいいから参加してもらって、音楽の楽しさ、喜びを感じてもらって、生きる気力を盛り上げてもらいたい」
「ですから、完全にチャリティーです、お金を目的にはしていません」
「あえて報酬と言うならば、聴いてくれた人の笑顔と、輝く目の力になります」
光は、そこまで語り、再び頭を下げて着席。
と同時に、打ち合わせ会議参加者から、一斉に拍手を浴びる。
音大の学長が立ち上がった。
「我が音大は、全面協力します」
「音大生も、プロの音楽家も楽しみにしている連中が多い」
「後は、どの曲を選ぶのか、どこから演奏するのか、ストリート演奏なので、あまり長くは出来ないと思うけれど」
大指揮者の小沢が、音大の学長に続いた。
「聴衆まで参加となると、第九かなあ、指揮棒を振るのは光君でも、僕でもいいよ、それとも他にあるかなあ」
内田先生も続く。
「第九は第九として演奏して、誰でも歌える学校で習った名曲でもいいかな」
「メンデルスゾーンの歌の翼にとか」
「別にクラシックにこだわることもなく、ジャズでもポップスでもロックでもR&Bでもかまわない」
いろいろ言われたので、光は苦笑。
「第九は・・・演奏したいですね、必ず盛り上がる」
大指揮者小沢が、早速決めてしまった。
「じゃあ、第九四楽章は光君の指揮に決定」
光が顔を赤らめると、また全員が光に拍手を送っている。




