捜査報告と光たち
警察の捜査により、地域選出の都議、地域の暴力団、寺が一体となった恐るべき実態が明らかになった。
まず、光たちが最初に気がついた大麻については、地域暴力団の大きな墓の下に、納骨部分とはまた別に収納スペースを作ってあった。
その収納スペースの中に、金額にして、30億以上の大麻、LSD他、大量の麻薬があり、また刀剣類、銃器、弾薬も相当大量に発見。
そして、さらに問題となるのは、隣接する他家の墓の下にも極秘に収納スペースを何個も作り、現金や純金、宝飾類も収められていたこと。
ソフィーは、実に呆れている。
「まさか、警察でも墓までは、滅多に調べないもの」
「それを確実に隠そうとして、地元の都議に金を積んで、保険をかける」
また、ソフィーにより「金満エロ坊主」と罵倒された、地元の僧侶への資金の流れ等が明らかになった。
まず、葬式から法事に到るまで、全ての仏事にかかる「お布施料」を、突然、相当な高額な基準、かつての2倍強にする。
そして、それに抗議をする檀家を、地域の暴力団関係者が脅す。
脅しても抵抗する檀家に対しては、葬儀と仏事を一切行わない。
やむなく、檀家を止めようとする家に対しては、「転出料」として、一千万円単位を要求する。
区役所や都、弁護士に相談しても、都議から圧力があるのか、「寺と檀家との間の宗教行為なので行政や法律家は対応しない」と、断られる状態。
また、葬儀や仏事を行う檀家の中に、僧侶が目を付けた女性がいれば、暴力団が動いて拉致、寺に連れ込み、麻薬で含ませたうえに、僧侶の性の道具とする。
また、僧侶の性の道具と化した後の女性は、暴力団たちの別の資金源、つまり風俗店への「売り物」と化す。
また、時には都議も、そのオコボレにあずかったらしい。
ソフィーから、一連の報告を聞いた光は、哀しそうな顔。
「何となく、母さんが呼んでいる気がして、墓参りしたら、とんでもないことが発覚した」
春奈は、光の母、菜穂子の思いを理解したような感じ。
「菜穂子さんが、退治してって、光君と私たちを呼んだのかな」
ルシェールは泣いている。
「それにしても、都議とか暴力団とか、僧侶は自業自得だけど、仏事料が払えなくて、売られた女性は可哀そうでなりません」
由香利は、怒りがやまない。
「親父の代紋見せたらペコペコする程度の極道が・・・だからチンピラって言うんだ、任侠の気概も何もない」
華奈は、光の顔をずっと見ている。
「光さんは、ほとんど動いていない、お母様のお墓参りをしただけで、こんな悪事を裁いてしまった」
「他者を活かす力が、強くなってきたって感じ」
由紀が、華奈に解説する。
「それは光君が、指揮者だからと思う。いろんな楽器の良さを引き出す」
「華奈ちゃんが、最初に無理やり音楽部に光君を誘ったから、その力も育ったのかな」
珍しく由紀にほめられた華奈は、真っ赤な顔で、由紀にスリスリ気味。
他の巫女たちも、いろいろ言っていたけれど、光が場を締めた。
「みんな、母の墓参りに一緒に行ってくれて、本当にありがとう」
「多少、変な輩がいたけれど、無事に退治することも出来た」
「母さんも、スッキリしたって、喜んでいる」
すると巫女全員がソファから立ち上がった。
ピアノの上に置かれた、光の母菜穂子の写真に、自然に手を合わせている。




