VS墓地に巣くう極道集団(2)
都議はピストルの銃口を光たち一行に向けながら、「条件」を言い始めた。
「まずは、この霊園を騒がせた罰として、君たち一人当たり、50万円の詫び料」
「それから、我々を恫喝したことに対して、一人当たり同じく50万円の罰金」
都議は、一旦後ろの僧侶を振り返り、また「条件」を言う。
「お坊様に多大なご心労とご不快の念を抱かせた罰として、一人当たり100万円、これについては御仏へのお布施とする」
「それを、即刻、今日中に納めなさい」
都議は、そこまで言って、胸を張る。
「これでも、君達が若年であることも考慮した、寛大な措置である」
ソフィーが代表して、その条件について確認をする。
「もし、当方が納得出来なかったら?」
都議は、突然、相当な怒り顔。
「おい!そこの女!」
「何を聞いていた!」
「相当な寛大な措置と言っただろう!」
「ここまで寛大な措置をしているのに、何を言うのか!」
「はい、わかりました、即刻納めさせていただきますと言うのが人の道であろうが!」
その怒り続ける都議の隣に、小坊主が立った。
怒ってはいないけれど、いかにも弁が立つ、慇懃無礼な感じ。
「もし、お納めいただけないのでしたら、いたし方ありませんね」
「こちらで案内する僧堂にて、女性の方は、そのまま尼僧となっていただきます」
「それから、男性の方は、まき割りなどをする作男にでも」
「これも、我が師匠の心温まるご厚志であります」
「ここで、こうやって知り合えたのも、御仏の御意志でございます」
「ですから、それを裏切るなどは、仏罰を受けることになりますよ」
小坊主の話が終わった。
ソフィーは、呆れたような顔で、目の前の極道一派を見て、声をかける。
「まあ、完全な恐喝だね」
「それと大麻を吸引、保持」
「いろいろと余罪はありそうだ」
すると都議はまた怒る。
「おい!そこの女!何を偉そうに!」
「お前は刑事か!」
「そんなの怖くねえぞ!俺は都議だ!」
「お前の上司の名前を言え!お前なんて、簡単につぶしてやる!」
しかし、ソフィーは冷静に名刺、身分証を提示する。
「ああ?私?公安だよ」
「しいて言えば、総理直轄、まあ日本政府が上司」
都議は、その冷静なソフィーの口調が、また気に入らないようだ。
「るせえ!ここは東京だ!総理だとか国とは関係ねえ!」
「ここには、ここのルールがある!」
既に、相当な錯乱状態、大麻を吸ったような口調になっている。
そのソフィーの隣に、由香利がいきなり立った。
「おい!そこの極道ども!」
「てめえら!いい加減にしな!」
「こんな霊園で大麻だと?」
「ざけんじゃねえ!それが任侠者のすることかい!」
「それに何だ!その金の無心!そんな非道なことばかりやっているのかい!」
ソフィーの冷静な口調とはうって変わった強烈なタンカである。
そして、それで一瞬ひるんだ極道たちに、由香利は「江戸の大親分の代紋」を鞄から取り出し、提示する。
「これでも、やるっていうのかい!」
まず、いきり立っていたヤクザ男たちが、ヘナヘナと全員座り込んでしまった。




