VS墓地に巣くう極道集団(1)
さて、最初に動き出したのは、コワモテの怖い姿に変身した金剛力士二体。
その巨体を何の臆面もなく、極道集団に向かって歩きだす。
光と巫女たちは、全く不安が無いので、金剛力士二体の後をそのまま歩く。
また、その金剛力士二体を迎えるような形になる極道集団も、現時点では何もされていないので、自分からは手出しは出来ない。
ただ、見ているだけの状態になる。
その金剛力士二体が、極道集団から、ほぼ5mの距離に達した時だった。
極道集団の下っ端が、何気なく、墓地に唾を吐き捨てた。
すると金剛力士阿形が、いきなり嵐のような大音声。
「この!たわけもの!」
「人々が安らかに眠るべき墓所に、何というフラチな真似をする!」
「そんな薬臭い唾を吐き捨てるなど、それが仏の供養に来た者の所業なのか!」
「すぐに浄めろ!」
「この大馬鹿者!」
何しろ、とてつもない大声なので、極道連中は完全にひるむ。
後ろで聞いている光と巫女は耳に栓をしている状態。
それでも極道集団は、反発を開始する。
「おいおい!てめえ!」
「どこの組だ!見かけねえ」
「いいか!ここは俺らのシマだ!」
「よそ者に言われる筋はねえ!」
阿形は、それを聞いてまた、怒る。
「お前らは、御仏の心を何と心得る」
「御仏の前には、少なくともお前らのシマなどはない!」
「とっとと浄めよ!」
「少なくとも、御仏の大地を、お前らの汚物で汚した」
「仏罰は逃れられんと知れ!」
その阿形の怒鳴り声がきっかけだった。
極道集団は、一斉に内ポケットから、短刀やピストルを取り出し、金剛力士二体、そして後の光と巫女たちを威嚇する。
「おい!そこの化け物!」
「これが目に入らねえのか!」
「いいか!オハジキもあるぜ!」
「どこに飛ぶかわからねえぞ!」
「そこの青白いガキと、お姉ちゃんたちだって、どうなるかわからねえぞ」
極道集団が騒いでいると、壮年の男が、それを抑えた。
「ああ、君達、うん、そこの大きな人二人と少年少女たち」
「私は、都議会の議員だ」
「ここの人たちはね、地域に多大な貢献をしている名士の事務所の従業員なんだ、だから、逆らってはいけない」
「君達も、余計なことをして怪我をさせても、申し訳ないし」
「それでも君達が納得出来ないと言うのなら、こちらで通報させてもらうよ」
「その大男の暴言と威嚇、地域の名士の従業員への態度が悪すぎる」
「いいかね、それが君達の学園に知られれば、退学にだってなるよ、それでもいいのかい?」
立派な袈裟を着た僧侶が、付き添いの僧侶に耳打ち、それが「都議」を名乗る男に伝達された。
すると、都議を名乗る男は、ニヤリと笑う。
「ああ、それでも、お坊様、ここのお坊様は君達のような下賤の身では拝めないほどの高貴なお坊様」
「そのお坊様が、君達の態度に、相当ご立腹されている」
「いいかね、これから、こちらの条件を言う」
「それを果たしなさい、そうでなければ・・・」
都議を名乗る男も、その胸からピストルを取り出している。




