光の母の墓参り(2)
光と巫女たちの一行は、大型タクシーにて霊園に到着した。
ソフィーは警護の必要もあるので、政府車を主張したけれど、光が強硬に「僕の個人的な墓参、日本とは関係ない」と主張したため、大型タクシーとなった。
その霊園を歩き、本当に平均的な墓に、光の母、菜穂子は眠っている。
その墓の前に立ち、光が始めたことは、掃除。
雑草を除き、落葉を集め捨てる。
墓石に水を何度も掛ける。
巫女たちが手伝おうとするけれど、厳しい顔で拒絶する。
「僕の母さんなの、だから僕がしたい」
自分たちも墓の掃除をしようと思っていた巫女たちも、どうにもできないほどの光の厳しい顔だった。
ようやくきれいにした墓の前に立ち、光はお線香を置き、目を閉じ、手を合わせる。
「母さん、プロになれるみたい」
「がんばる、応援して」
「元気に生きてる、父さんは、まだ北海道」
「後ろにいる巫女さんたちが、支えてくれている」
「ありがたいね、こんな僕なのに」
まともな言葉は、そこまでだった。
光は、泣き出してしまった。
「逢いたい・・・逢いたい・・・逢いたい・・・」
「寂しいよ・・・寂しい・・・」
「僕のせいで、死んじゃった・・・」
「ごめん、ごめん、僕が馬鹿だった・・・」
「僕が飛び出さなければ、トラックを母さんが止める必要もなかった」
「母さんが、すごい力でトラックを止めてくれなかったら、僕は死んでた」
「でも、その力を使い過ぎて、母さんは死んじゃった」
「だから、僕のせいなの、僕が馬鹿だったの」
「僕が馬鹿だった・・・ごめんなさい・・・」
光は、もう、言葉が出ない。
ただ、泣くばかりとなった。
後にいる巫女も、光を見て、号泣。
そして、光の心の傷が、実は何も癒えていないことも、理解する。
ルシェールが泣きながら、光の隣に立った。
「菜穂子さん、ルシェールです」
「今、叔母さんの部屋に住まわせてもらっています」
「力不足かもしれない、でも、ルシェール、そしてみんなで、光君を支えます」
「菜穂子さん、いろいろ・・・教えてください」
震えながら、ルシェールもお線香、そして手を合わせる。
ルシェールに続いて、全ての巫女が、お線香を置き、手を合わせた。
全てが終わったことを見て、光が全ての巫女に頭を下げる。
「本当に僕の個人的なことなのに、ついて来てくれてありがとう」
そして、恥ずかしそうな顔。
「また泣いちゃった」
「母さんに怒られた、泣き虫って」
「しっかりなさいって、男の子でしょって」
全ての巫女が、また涙ぐむ中、光はもう一度、墓に手を合わせた。
そして、また全ての巫女に頭を下げる。
「帰ろうか」と言うので、また全員が霊園出口に向かって歩きだす。
その光の足が、途中で止まった。
そして光の目は、霊園の一か所、人が多く集まっている場所に向いている。




