大元竹内の逮捕、仇敵坂口との会話 光はうらやましそうに渋谷上空の雲を見る。
結局、光と巫女たちは、ほとんど手出しをすることなく、渋谷駅一帯の混乱は収まってしまった。
そして市谷八幡宮近辺のアパートにて、全てをコントロールしていた大元は、踏み込んだ警視庁にあっけなく逮捕されてしまい、驚きを隠せない。
「どうして、ここの場所が?」
「こんな目立たない普通のアパートに・・・」
そして大元が乗り込んだ警察車両にて、更に驚くことになる。
先に、乗っていたのは、かの柔道界の超大物にして、かつて異種格闘技を行い苦杯をなめさせられた坂口なのである。
坂口の顔は厳しい。
「竹内が知らないことがある」
「俺は柔道家で警察の幹部だけじゃないんだ」
「石清水八幡宮の禰宜の家系だ、その探索の力も馬鹿にするな」
「それより、おい、竹内、なめてたのか?」
「こんな程度が悪いテロを計画するなんて」
「どうして、お前はそうなんだ」
「昔からそうだ、嫉妬で、常軌を逸した行動を取る」
「自分より上の存在を認めない、ずるがしこい手段を使って貶め、破壊しようとする」
竹内と呼ばれた「大元」は、拳を握りしめる。
「お前が禰宜・・・そんなの知るか!」
「は・・・どうせ死刑・・・」
「は・・・何人殺したかわからねえ」
「お前の説教なんて聞かん」
そして黙り込む。
坂口は、また厳しい顔。
「今回の件はな、とんでもない人が協力してくれた」
「お前なんかの程度の低い野郎じゃねえぞ」
「この俺が、全力を尽くしてもかなわないほど、格闘が強い」
「まだ、高校三年生だ」
「その高校三年生が計画を立てた」
その坂口の言葉に、竹内は意外な顔。
「おい、それじゃあ、オリンピック候補か?」
「そんな高校三年生の名前は聞いたことないぞ」
坂口は、首を横に振る。
「いや、お前は知らないはず」
「というか、柔道界でも格闘界でも、ほぼ知る人はない」
「何しろ、柔道部員でも格闘部員でもない」
竹内の顔は、実に困惑。
坂口の言うことが、さっぱりわからない。
坂口が、車窓から空を見上げた。
「まあ、しいて言えば・・・音楽家かな」
竹内は、また驚く。
「はぁ?音楽家?」
大元竹内が護送される警察車両では、そんな会話が続いている。
さて、光は、放課後は音楽部の練習になるけれど、今日は合唱部の指導をするらしい。
由紀と一緒に廊下を歩いていく。
由紀は、スッと光の手を握る。
「さすが光君、全てをコントロールしたの?」
光は恥ずかしそうな顔。
「いや、全て阿修羅君の手配、全部任せて欲しいって言われた、音楽に当分集中して欲しいみたい」
「しかし、神々の宴会も楽しそうだ、阿修羅君が歌っているもの」
光は、うらやましそうに、渋谷上空の雲を見つめている。




