渋谷駅一帯の混乱は収束に向かう
午後4時10分、渋谷駅と、その周辺では、警備員たちが首を傾げる姿が多くなった。
しきりにつぶやくのは、
「キャップから連絡がこない」
「予定では午後4時のはず」
「午後4時に爆発開始、それも一斉ではない」
「時間差で、場所もランダムに爆発させ、混乱を招く」
「地下鉄駅、地上の駅も全て爆破」
「混乱の中で、逃げ惑う市民を制裁、人質に取る」
「抵抗すれば、仕方が無い、殺人も許可されている」
「何故、連絡が来ない?」
「もしや・・・バレたのか?」
「いや・・・まさか・・・」
午後4時30分を過ぎた。
しかし、「キャップ」からの連絡はない。
「仕方が無い、こちらから・・・」
警備員ではない。
渋谷駅の所轄派出所の警察官、おそらく現場責任者らしい男が、「キャップ」にメールを打つ。
そして、すぐに異常を把握。
「送信・・・できない・・・」
「電話・・・使われていない番号だと?」
「キャップ」とは連絡が取れず、渋谷駅周辺の警備員からは、また異なる一斉連絡が入った。
「植え込みの爆弾の赤い点滅が突然消えた」
「無線そのものが遮断されているらしい」
「復旧も困難、キャップと連絡が不可能」
この時点で、渋谷駅一帯無差別爆破計画は、遂行困難が確定。
その場合には、無差別に通りすがりの市民を攻撃する手はずになっている。
「よし!仕方が無い!やるぞ!」
現場責任者渋谷駅所轄の警察官が、一斉メールを送信する。
そして、そのメールが送受信された瞬間だった。
現場責任者渋谷駅所轄の警察官のスマホ、そして警備員たちのスマホから、突然強い電流が発生。
メールを送信した警察官、そして受信した警備員たちは、全身に強い電流衝撃。
途端に、全員が口から泡をふき、痙攣が発生、意識を失ってしまった。
渋谷駅上空では、大国主命、少彦名、ソフィー、地蔵が地上の様子を見ている。
大国主命は厳しい顔。
「とにかく、不逞の輩は、これでどうにもならない」
少彦名は哀しげな顔。
「実に情けない輩である。自我を優先し、平和を乱そうとするなど」
ソフィーは目を光らせた。
「電源は全て復旧、混乱はありましたが、交通網は回復しています」
「人間界では、単なる局地的停電といたします」
「政府は光君の指示通りに、発信元を市ヶ谷で捕縛と同時に通信傍受と通信障害システムを作りました」
地蔵の目に、八部衆の神々が映る。
「これから、八部衆の神、サカラ神による浄化の雨が降るようです」
その言葉と同時に、まさに興福寺の童顔のサカラ神が宙に浮かび、そして竜に変化、その口から青白い清浄雨が渋谷駅一帯に降りていく。
地蔵も、他の御神霊も面白そうな顔をする中、ソフィーは苦笑いをしている。
「光君と巫女さんたちが、ほぼ出番がなかったって、言っております」
大国主命が、それで大笑い。
「計画だけいただいた、何も阿修羅様自身が対処するほどの相手ではなく」
渋谷駅上空の雲の上では、そのまま神々の宴会も始まっている。




