渋谷に大災害を起こす邪神出現(2)
阿修羅の声が発せられた瞬間、ソフィーの背中に天使の羽が出現、ソフィーは空に舞い上がろうとする。
「とにかく爆弾だと思う!」
「爆発物処理、警察でも自衛隊でも、できるだけ集める!」
珍しくソフィーが冷静さを欠いている様子。
光は、まだ冷静。
「遠隔操作の可能性になると思う」
「細かな爆弾を大量にばらまき、遠隔操作にて爆発させる」
「その大元をつかむこと」
「無線電波の傍受分析も必要」
光の指摘に一つ一つ納得するのか、ソフィーの羽が消え、顔の赤みも消えていく。
「そうか・・・大元は他人に危害を与えても、自分は絶対に姿を見せないタイプ」
「だから、遠隔操作で、その大元を見つけるのか」
光は、なお冷静。
「二重三重の仕掛けもあるかもしれない」
「大元にたどり着くまでに、様々な妨害トラップをシステムで組むこともある」
「そうなると爆発物処理班だけでは足りない、専門の無線電波の傍受スタッフ」
「爆発物を探知する装置・・・」
そこまで話をして、光はソフィーの顔をじっと見る。
ソフィーは、少々慌てた。
「う・・・光君、こういう時は、マジにかっこいい・・・」
「ルシェールから奪い取りたくなる・・・」
ただ、光からソフィーにかけられた言葉は、色気も何もない。
「ソフィー、渋谷界隈の全ての警官が持つ通信機器に、妨害トラップを逆にしかけて」
「通信遮断ではなくて、通信が出来ているように見せかけて、全て官邸と公安に情報が集まる感じ」
「まずは、それをやって」
「なんでもかんでも、空に浮かべばいいってものじゃない」
ソフィーは、光の対策には感心するとともに、最後の言葉が気に入らない。
つい、文句を言ってしまう。
「わかった!それやる」
「でも、なんでもかんでもって、その言い方って何?」
そのソフィーを、ルシェールが背中をトンと軽くたたき、鎮める。
「ソフィー、そんなことを言っている場合?」
「公共の安全を保つのが、ソフィーのお仕事でしょ?」
「それに光君が、アドバイスをしてくれたの」
「あのまま空に舞い上がって渋谷駅に行っても、効率は悪いと思うよ」
ソフィーも、ルシェールに正論を言われると、文句は言えないようだ。
「ルシェール、仕事終わったら、クリームたっぷりのエクレアとシュークリーム頼む」
と言い残し、また背中に羽を生やして、空に飛びあがり、公安庁に向かう。
そして光たちは、そのまま学園への道をたどる。
さて、天使長ミカエルからの報告通り、渋谷駅界隈では、いつもと異なる不穏な雰囲気に包まれている。
とにかく交通事故が多発、それに伴う交通渋滞がひどい。
また、交通事故は一般道だけではない。
至近を通る首都高速でも、大きな玉突き事故が発生し、数台の車両が炎上。
中には化学薬品を積んだ大型トラックがあったのか、異臭も発生しているけれど、対応できる警察事故処理班も限られているため、全てが後手後手となっているようだ。
そして、そのような情勢の中、警備員の制服に身を包んだ男が数人、歩道の植え込みなどに、何か赤く点滅する小さな玉を埋めていく。




