銀座の大楽器店で、危険なお嬢様を発見
光と巫女集団は、実にスンナリと私鉄とメトロを乗り継いで銀座に到着した。
やはり光の周囲を固める由紀、キャサリン、サラ、春麗の防御結界が強固なのだろうか。
ソフィーは日本政府として当然だけれど、春奈、ソフィー、ルシェールも周囲の警戒は怠らない。
ただ、華奈だけが「私は、どうも光さんに近づけない」とブツブツ言うけれど、途端に伊勢の上位巫女の由香利に、
「そういうことを言う前に、周囲の監視警戒、そういう甘さがみんなの足を引っ張るの」
と言われて、シュンとなるけれど、やはり華奈は素直。
全員で銀座7丁目の大きな楽器店に入り、光が楽譜コーナーにて楽譜を探している間も、他の巫女と同じ、周囲の監視を怠らない。
ただ、そんな華奈でも、少々気づいたことがあるらしい。
由香利の脇をつんつんとして、
「ねえ、由香利さん、ちょっと変な女の子がいる」
由香利も、その「変な女の子」には気がついていた。
「そうだねえ、立派な服を着た紳士みたいな人を引き連れて、時々叱っている」
「自分は真っ赤なドレス、いかにもお嬢さん風?」
「15、6歳ぐらいかなあ」
春奈も、その女の子を見て、顔をしかめた。
「何なの?あの子、大人に対して命令口調、さっさと選んで持って来てとか」
「威張り散らしているって感じ、何様なのかなあ」
ルシェールも顔が厳しくなっている。
「それとね、時々、他のお客を見て、こんなゴミ虫なんてどうでもいいとか」
「臭くて仕方ないとか、睨んでいるよ」
ソフィーは早速タブレットを取り出し、「何か」を調べ始める。
そして、すぐに、その結果が出た。
「うん、何となく見覚えがあった、あの紳士とあの娘」
「大財閥の三男の孫娘、超豪邸に住んでる」
「年齢は15歳、高校生。超名門のミッション系学園に通っている」
柏木綾子は、その赤いドレスの娘を、ずっと見続けている。
「とにかく感じるのは、他人を蔑視する傾向が強い」
「それと・・・そういう育ちをしていたからだけではなくて・・・」
「何か、すごく禍々しい感情が、奥底にある」
ソフィーは、柏木綾子の分析に驚いた。
「え?綾子ちゃん、そこまで見える?」
柏木綾子の目が、悲しそうな雰囲気に変わる。
「はい、すごく問題が深い女の子です」
「感情の制御ができないというのか」
柏木綾子もソフィーを見た。
「ソフィーさん、あの立派な紳士をしっかりと見てください」
「あの紳士の身体が、どうなっているのか」
柏木綾子のソフィーへの言葉に、他の巫女も一斉に反応した。
そして、そのお嬢様を透視した巫女全員の顔に衝撃が走る。
ソフィーは驚いた。
「え・・・何?あのお付きの人の皮膚・・・アザだらけ?」
春奈は震えた。
「おそらく鞭の跡だよ、赤いの、黒いの、紫?肌が裂けている部分もある」
ルシェールの目には涙。
「おそらくあの女の子が・・・ひどすぎる」
由香利の目には怒り。
「気に入らない、引っぱたきたくなった、何様のつもりだい!ガキ娘のくせに!」
由紀も怒り。
「私も許せません、でも光君たちは?」
由紀たちが光とキャサリン、サラ、春麗を見ると、光はいつもの、「ハンナリ顔」。
ただ、キャサリン、サラ、春麗は他の巫女と同じ、「超お怒り顔」になっている。