春奈VS母美智子 翌日の朝食は飛鳥鍋
春奈の部屋に集まっていた全ての巫女が自室に戻ってから、春奈は奈良に住む母美智子に電話をかける。
「ルシェールと部屋を交代した」
母美智子は、いつもの通り辛辣。
「変な文句とか皮肉を言うからそうなるの、年甲斐もない、嫉妬し過ぎ」
春奈は、それが悔しい。
「だって独占したいけど、すごい巫女ばかりで難しいもの」
美智子
「だからと言って、自分の欲しい気持ちばかり優先してどうするの?」
「あなたまだ、光君の本当の苦しみがわかっていないよ」
春奈は、厳しい言葉に、また落胆。
「しかたないもの、ついイラついちゃう・・・でも、寂しい」
美智子
「ルシェールが適任ってのは、誰もが認めていること」
「でも、ルシェールが春奈に引いていたの、それだけ」
「ルシェールはやさしい子だから、おっとり過ぎる所もある」
春奈は、また涙があふれてきた。
「またいつか、光君の近くに行けるのかな・・・無理かな・・・」
美智子の声が厳しく変わる。
「春奈、そんなことを言っているから、フラれるの」
「今の光君が対処している事案を考えれば、嫉妬のどうの部屋がどうのって言っていられないって」
春奈は、少し反省。
「つい・・・それを忘れる・・・」
「マジで大変かも」
美智子の声が実に厳しい。
「とにかくどんなテロをするかわからない」
「ビル爆破テロ、鉄道テロ、化学兵器テロだってあるんだよ」
「だから、これ以上は、光君の足を引っ張らないように」
「光君は変な風に気を回している余裕はないの」
春奈は、「うん・・・わかった」と、応える以外には、何もできなかった。
母美智子との長い電話を終えた春奈のスマホには、奈良に住む光の叔母圭子といとこの楓からのメッセージ。
いずれも、「ご苦労様でした。後でゆっくりお話しましょう」とのこと。
既に深夜だったこともあり、春奈は眠るしかなかった、
翌朝になった。
いつもの通り、巫女全員、華奈も入っての朝食になる、
ルシェールが今日の料理主任となっているけれど、食卓に乗っているのは、奈良の伝統的な飛鳥鍋。
ルシェールが、少し頬を赤らめて説明をする。
「奈良出身の皆さまにはおなじみですが」
「鶏がらベースに牛乳をいれて、心も体も温まる鍋」
「鶏もも肉、にんじん、ネギ、シイタケ、糸こんにゃくを入れました」
春奈は、一口食べた時点で、感激。
「なんか・・・やさしさたっぷり、奈良の味というより、ルシェールの味」
ソフィーも食がかなり進む。
「母ニケより美味しい、さすがルシェール」
華奈も感激気味。
「ずっと食べたかったの、これ、母美紀は面倒って作ってくれない」
「・・・私、ルシェールに教わろうかな・・・」
奈良育ちではない巫女たちも、「コクがある」「おなかが落ち着く」「でも、カロリーはそれほどではない」と、満足げな感じ。
さて、いつも寝ぼけまなこで朝食を食べる光も、珍しく目が開いている。
そして光が気がついたことは、今日の飛鳥鍋の味付けが、亡き母の菜穂子と全く同じであること。
「ルシェールは母さんのレシピを読んだのかな」
その光の心を読んだのか、ルシェールは薔薇のような笑顔で光を見つめている。




