春奈とルシェールの部屋交換を実施。
春奈は、光のことが好きで好きで仕方ない。
問題は、光が阿修羅の意を汲んだ戦闘が多いこと、その戦闘を支えるための巫女が多くて、どうしても光を独占できないこと。
嫉妬と言えば、そうとしか言いようがない。
年齢差も厳然としてあるけれど、認めたくない。
いつまでも弱々しくて可愛い光であって欲しいけれど、この地球そのものが危険な状態なのだから、とてもそんなことは望めない。
それに光が一番好きな、音楽家としての生活を始めることもある。
春奈は、それほど音楽に詳しくないし、語学力もそれほどではないから、外国の舞台関係者との交渉も、自信はない。
そうなると、カトリック教会にネットワークをしっかりと築くルシェールが、どう考えても適任。
春奈自身が、ルシェールなら光を任せるなら、大丈夫と何度も思ったことがある。
「そうなると・・・私は年齢差も世界や地球情勢も、光君の音楽家としてのデヴューも考えず、ただ光君を独占できないで嫉妬しているだけかな」
「そんな我がまま嫉妬年上おばさんが・・・光君にまとわりつく?」
「みんなの言う通り、オジャマ虫でしかない?」
「やだ、そんなの」
「聖母マリアの癒しの巫女ルシェールに任せよう、それなら納得する」
春奈は、いつまでも、座り込んではいられなかった。
気持を固めて、光とルシェール、そして巫女全員に頭を下げた。
「わかりました」
「本当に我がまま言って、皮肉も言って、光君を苦しめてごめんなさい」
「今後は、光君のお世話は、ルシェールに任せます」
「寂しくて辛いけれど・・・」
最初は気張って話をしていたけれど、結局、涙があふれてしまって、言葉も出ない。
由香利が、スッと身体を支えてくれたので、すがって立つしかない状態。
ソフィーが、厳しい顔でテキパキと話を進める。
「部屋の移動交換を行います」
「春奈さんの荷物は、ルシェールの部屋に」
「ルシェールの荷物は、春奈さんの部屋に」
「もう、余計なことは言わない、感情を挟まず、移動作業に専念願います」
「全ての巫女が協力願います」
ほぼ、2時間で移動作業は完了となった。
春奈が、がっかりしたような、それでいてルシェールなら大丈夫と思う不思議な思いで新ルームにいると、ソフィー、由香利、由紀がお菓子とお茶を持って入って来た。
ソフィーがトントンと春奈の肩を叩く。
「厳しく言ってごめん」
春奈はソフィーの手を握る。
「いいよ、グチャグチャしていても仕方ないもの、また未練が出る」
由香利は春奈を抱きしめる。
「春奈さんは、休憩しないといけないと思った」
「みんなで交代で光君を支えてもいいの」
由紀も、由香利の次に春奈に抱きつく。
「あくまでも、光君のマネージャーって事務的なこともあるの」
「春奈さんは、まだたくさん役割があるよ」
春奈は、そんな訪問がうれしかった。
「確かに肩の荷が少し軽くなった」
「ルシェールは安心感たっぷり、光君の幼なじみだしね」
「いつも私をフォローしてくれていたの」
そこまで言って、春奈は、華奈が気になった。
「華奈ちゃんは?」
ソフィーが肩をすくめた。
「大泣きになって帰った」
「自分が春奈さんの後釜になる気持ちだったみたい」
その後は、他の巫女もルシェールと華奈以外は、全員春奈の部屋に集合。
夜通しの巫女会話となったようだ。