ソフィーの実行犯報告と、予想される、より大きな危険
さて、光の「寝物語を一緒に」を素直にとらえたソフィーの調査は、異様に速かった。
ほぼ3時間で光の家に戻って来て、早速報告を開始する。
ただ、その内容は厳しいものだった。
「まずは実行犯は、元自衛官、あまりにも腕が立つので海外に職を求め、北アフリカのテロ組織へ」
「そのテロ組織では、中心人物として活動」
「様々な犯罪歴があると思われる」
「自爆テロの計画を立て、適当な生贄を確保、麻薬を飲ませ、市街地にて爆破テロを実行、100件を超えるらしい、ただ決定的証拠はない」
「少女を集団で誘拐することも何回も、おそらく自らの性欲処理を目的」
「それと目を引くのが、要人暗殺、これは70件以上」
「捕縛されないのは、決定的な証拠を残さないことと、逃げ足が非常に速いこと」
光が口を開いた。
「それでも日本には税関を通れるんだ」
「犯罪者扱いもなく?」
ソフィーの表情は厳しい。
「いや、国内に入ったという公式な記録がないの」
「考えられるのは、貿易船の船員に紛れて、入り込んだ」
春奈が難しい顔。
「そんなの通用したら、他にも危ない人が、入って来る人がいるかもしれない」
「マジに怖いってそんなの」
光を含めて、他の巫女も難しい顔になる中、ソフィーは報告を続ける。
「自衛隊を辞めたのは、海外で腕を振るいたい、悪でも何でも実戦で腕を試したいという理由だったらしいけれど」
「実はね、その渡航時点では、かなりな借金があった、5千万円を超える」
「資金使途は、競輪と競馬かな、闇金らしいけれど、自衛隊の元同僚からも」
「まあ、自衛隊の元同僚のは恫喝か恐喝かって感じかな」
ソフィーが腕を組んだ。
「それがね、全ての金融機関、闇金まで調べたけれど、チャラになっている」
「まあ、北アフリカで暴れてた時に、よほど儲けたと言っても、そこまでは無理な金額」
「となると、よほど金払いがいいスポンサーがついたのか」
「そのスポンサーに仲介する輩がいたのか」
ソフィーの報告が、そこまで進んだ時点で、光がまた口を開いた。
「元自衛隊でも、現自衛隊でもいいけれど、その実行犯と接触があった男を全て調査して欲しい」
「その中に・・・駅前で笑いながら見ていて逃げた奴が、いるかもしれない」
光の顔が、厳しさを増した。
「あの派出所での殺戮は、日本政府に対する脅迫の一つに過ぎないかもしれない」
「もっと大きなテロがあるかもしれない」
「全ての空港の入国審査は当然、船舶は貨物船を含めて、厳重な検査が必要と思う」
「すでに、何人か入り込んでいる可能性もある」
由香利の顔が紅潮した。
「マジに気に入らない、親父にも協力させる」
「所詮は外道さ」
「そんな人の道を踏み外すような奴ら、野放しにしてはおけない」
光は、また考える。
「あの冷やかしで見ていた男の、逆恨みの念・・・そこにポイントがあるような・・・何を持って逆恨み・・・」
しばらく考え込んだ光の耳に、少しずつ、聞きなれた鈴の音が近づいて来た。




