早速ワイドショーで事件報道、様々な意見が述べられる
駅前の騒動をおさめ、ソフィーは事後処理で警察に出向いた。
光たちが家に戻ると、早速ワイドショーではその騒動が報じられている。
春奈は、光たちを取り上げる部分に注目。
「群衆の中から高校生の男子と女子が出て来たまでは、言われているけれど、大した扱いではないね」
由香利もホッとした顔。
「体内から大量のアルコール部分が検出されて、結局酔いが回って倒れたってことになっている」
由紀もホッとした顔。
「これで変なマスコミに取材されないで済む、とにかくしつこいし、ひどいから」
ワイドショーの画面が、警察官が全員殺害された派出所に変わった。
その襲撃事件への、コメンテーターの意見は、実に様々。
その中で、ほとんどのコメンテーターの意見と、視聴者からの意見の多くは犯人に厳しいもの。
「こんな凶悪事件を起こすような犯人は、野放しにするべきではない」
「市民の安全を守るべき警察官を殺すなど、悪魔の所業、厳罰を課すべき」
「こんな犯罪があちこちに起きたら、平穏な市民生活などできない」
「政府をあげて、危機管理対策を検討するべきだ」
・・・・・・
そんな意見が多いけれど、また別の意見を言う政治家と人権派として有名な評論家がいる。
まず、野党の前党首が、犯人に対する厳しい罰を求めるコメンテーターたちに自制を求めた。
「そもそもの問題点として、警察官が武器を携行していることにあると思うのです」
「そんな武器を携行するから、市民の反発を招くのです」
「それと、どんな暴行犯人にも人権があるのです」
「ですから、暴行を受けたとしても、行政としては、犯人に傷をつけることは認められてはいません、それを理解するべきなのです」
その発言に首を傾げた別のコメンテーターが、政治家に質問をする。
「もし、そんな対応で犯人が逃げてしまって、別のところで市民に暴行をしたら、どうなるのですか?」
「殺された警察官と、また暴行を受ける危険がある市民には、生存権がないのですか?」
政治家は、少し面倒そうな顔。
「あなたたち、犯人を厳しく取り締まる、そんな人権侵害思想に取りつかれ過ぎているのではないですか?」
「そもそもね、行政が市民に危害を与えてはならないということを、理解するべきなのです」
「それで警察官が、暴行犯に危害を加えられ、殺害されたとしても、職務なんです」
「それで犯人が逃げてしまい、別の場所で事件を起こしたとしても、それはまた別の話になるのです、とにかく理由の無い暴力は行政は絶対に市民に行使してはならないのです」
その政治家の意見に続いて、人権派の評論家が意見を述べる。
「確かにその通り、それだから極刑などを主張する輩は、単なる殺人鬼です」
「だから、いまだに死刑などの刑が残る日本は、殺人鬼の国、野蛮極まりない国なんです」
ただ、その政治家と評論家とは意見を異にするコメンテーターや視聴者も多く、ワイドショーでは、喧々諤々の議論が続いている。
ずっと黙ってワイドショーを見ていた光が、ポツリとつぶやいた。
「何はともあれ、平和とか安全は、座視して適当なことを言っているだけでは守れない」
「それより何より、また、事件が起こりそうな気がする」
その言葉で、巫女全員に、緊張が走っている。