駅前の殺人鬼(2)捕縛と新たな不安
「ん?何だ?この手・・・」
光の目の輝きと同時に、包丁男の手に異変が生じた。
「うわ・・・何で・・・この包丁が俺の首に?」
「おいおい・・・どうしてだ・・・俺が俺の首を切る?」
包丁男は、動き回るけれど、その手の動きは止まらない。
本当に少しずつ、自らの首に包丁の切っ先を伸ばす。
「おい!誰か止めろ!」
「こんな大勢見ていやがって、何故俺を助けない!」
「おい、もう、3cmもない」
「おいおいーーーー!」
「何とかしろーーー」
包丁男は、すでに失禁、ヘタヘタと座り込んでしまったけれど、それを見ている誰の足も動かない。
ついに包丁の切っ先が、包丁男の喉仏に刺さった時だった。
包丁男は痛みのため、絶叫する。
「痛てえ・・・突き刺さる・・・助けてくれえーーー」
そして、包丁男の声は、そこまでだった。
少々の出血とともに、失神、駅前の地面に横たわってしまう。
ソフィーが群衆をかき分け、姿を現した。
そして応援を頼んだ数人の警察官により、包丁男を捕縛する。
包丁男を取り囲んでいた人々から、安堵のため息が漏れるなか、ソフィーは全員に説明。
「私は公案特別調査員のソフィーと申します」
「そこの警察派出所の警察官5人、全てこの包丁男に殺されたようです」
「犯行時間は、ほぼ5分以内、かなりな手練れにして凶悪」
「単独犯のようですが、万が一の共犯者の存在も考えなくてはなりません」
「治安当局といたしましては、まだ全容を解明できておりません」
「誠に申し訳ありませんが、今後は、残念ながら、しばらくの間、外出時には用心を願います」
そのソフィーの説明で、群衆には再び、動揺が走る。
「何か、あの男の子の目が突然光って異常な動きになって」
「うん、その理由は不明だけど、助かったことは助かった」
「確かに今起きたばかりの事件、全容解明はすぐには出来ないよね」
「でもなあ、怖いよね・・・」
さて、光は、そんな雰囲気の中、群衆の後方にいる一人の中年男に注目している。
その注目に柏木綾子も気づいていた様子。
「光さん、あの人ですか?確かに目付きがおかしい」
「表情も最初から、せせら笑っているような感じ」
キャサリンも目を凝らす。
「そうですね、よからぬ念を感じますが・・・」
サラの目も厳しい。
「ゴロツキのような感じ、ずるがしくて、逃げが速い」
春麗の顔には怒りが浮かぶ。
「ああいう男ってメチャ嫌い、人々の恐怖をせせら笑い、イザとなれば誰かにすがって逃げるタイプ」
由香利が光に耳打ち。
「親父の子分に探らせるよ、締め上げるかな」
ただ、光は冷静。
「明確な犯罪を起こした証拠は、今はない」
「泳がせておく、カルラ神にも見張ってもらうけれど」
「起こす可能性が出れば、八部衆の神々が止める」
ルシェールが、光にスッと寄り添った。
「光君、少し成長したね、仲間に任せられるようになった」
光は、恥ずかしそうな顔になっている。




